オニグルミ  Juglans mandshurica var. sachalinensis

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オニグルミ(宝塚市武田尾:2000.5.19)

クルミ科* クルミ属 【*APGⅢ:クルミ科】

Juglans:クルミ mandshurica:満州の sachalinensis:サハリンの

信州を旅行していて、バスや列車の窓から外を見ていますと、川沿いなどにトチノキやホオノキなどに混じってオニグルミの木が点々と生えているのがみえ、 それだけで、自分は信州に来ているのだという実感がわきます。このように、オニグルミはその分布の中心を温帯地域にもっていると考えてよく、 夏の暑さが厳しい大阪の平野部では、オニグルミの自生を見ることはまれです。 わたしが確実に記憶している大阪での自生地は能勢の初谷川の川沿いと東大阪市石切の辻子谷でした。 ただし、博物館などにある証拠標本をもとにつくられた「大阪府植物目録(桑島著)」には[山地・やや希れ]と注記されてはいるものの、妙見山、金剛山、箕面、私市などにまじって堺市大和川堤という産地も記載されており、 少なくとも過去にはもっと身近なところにオニグルミがあったのかもしれません(この記事を最初に書いてから数年後、淀川・城北公園(大阪市旭区)のワンドの堤に数本のオニグルミを見ています)

オニグルミの果実(2000.6.3 東大小石川植物園) オニグルミはクルミ科の落葉高木で、高さ20数m、胸高直径1mに達するといわれています。 長さ数10cmもある大きな奇数羽状複葉をつけ、春先きに、上写真のように、枝先から長いひも状の雄花(尾状花序)をつけます。 雌花も尾状花序につき、秋には褐色の毛でおおわれた直径3~4cmの果実がたくさんなって、やがて果序ごと地面に落ちてきます(右写真:オニグルミの果実(2000.6.3 東大小石川植物園))。 その堅果をナッツとして食用に利用することで有名ですが、細工のしやすい有用材がとれることでも有名です。

一般にクルミといっているのは、世界に10数種あるクルミ属樹木の堅果を総称したもので、 私たちは堅果の中にある子葉を食べています。日本では古来からオニグルミとその変種であるヒメグルミを利用してきました。 しかし、両者は堅果を採る目的でわざわざ栽培されることはないようで、ナッツの生産目的には、ヨーロッパから中国を経て導入されたテウチグルミやペルシャグルミ、 両者の自然交雑種と考えられるシナノグルミなどが信州を中心に栽培されているそうです。