オオバヤシャブシ  Alnus sieboldiana

オオバヤシャブシ(西宮市北山公園:2001.5.5)

オオバヤシャブシ (西宮市・北山公園:2001.5.5)

カバノキ科* ハンノキ属 【*APGⅢ:カバノキ科】

Alnus:alder(ハンノキの仲間)のラテン古名 sieboldiana:シーボルトの

オオバヤシャブシは、本来、伊豆諸島、関東南部および和歌山県南部の沿岸地域だけに分布する落葉樹ですが、大阪近辺でも、日当たりのよい道路法面やハゲ山などの砂防や緑化の目的で植えられ、比較的よく目にします。重鋸歯縁の葉の表面はあざやかな緑色で光沢を持ち、裏面は淡褐色で、12~16対の目だった側脈が平行に走り、先端は鋸歯に達しています。オオバヤシャブシという名前は、ごく近縁のヤシャブシにくらべ葉や雌果序(果穂)のサイズが大きいことによっています。

本来の自生地ではないのに、荒れ地でオオバヤシャブシを見る機会が多いのは、オオバヤシャブシが属するハンノキ属の樹木が荒廃した土地を短年月で緑化する目的でよく植えられ、またこのようにして植えられた木から種子が散布され、自然に生えてくることが多いからです。オオバヤシャブシに限らず、ヤシャブシやヒメヤシャブシなどハンノキ属の樹木の根には放線菌の一種が寄生して根に根粒ができ、その働きで空気中の窒素を固定して肥料分として利用できるので、もともと土に肥料分のない場所でもよく生育できます。

かつて北生駒の土取り跡地など荒れた土地を緑化するとき、大阪府の指導もあって、多くの場合、アカマツとオオバヤシャブシの小さな苗を交互に植え付けられました。これは、まずオオバヤシャブシの根粒の働きで土壌の肥料条件を改善し、それによってアカマツの生育環境も良くしようというアイデアでしたが、私たちが以前調べたところではオオバヤシャブシの生育がアカマツよりはるかによく、多くの場所でアカマツが被陰されて枯れ、オオバヤシャブシだけが生き残っていました。

このように、オオバヤシャブシは荒れ地を短い時間で緑化するにはたいへん優れた樹種だと思いますが、10年ほど前にはこの仲間の花粉がアレルギーの原因になるといって嫌われ、場所によってはすでに大きくなった木の伐採も行われたようです。