ヌルデ  Rhus javanica

ヌルデ(北山公園(西宮市:1999.9.12))

ヌルデ (北山公園(西宮市:1999.9.12)

ウルシ科* ウルシ属 【*APGⅢ:ウルシ科ヌルデ(Rhus)属】

Rhus:ウルシの1種に対するギリシャ名に由来 javanica:ジャワの

ヌルデは、道を作るために山の斜面を削ったところや川岸などで必ず見ることのできるウルシ科の樹木で、雌雄異株です。ふつう、高さ数m、幹の太さ10数cm以下のものをよく見かけますが、大きいものでは高さ10m、直径30cm程度に達するものがあるそうです。砂礫や岩石の多い、やせた乾燥地などでもよく生育し、荒れ地を代表する樹木の一つといえるでしょう。もちろん、森林の伐採後などにもごくふつうに生えています。同じウルシ科のヤマウルシやヤマハゼと同じように秋には紅葉して野山を彩りますが、羽状複葉の中軸に葉身の名残りが翼となって残っていますので、これらとは容易に区別できます。ウルシ科の中では毒性が弱く、これでかぶれることはほとんどありません。

ヌルデという名前は、樹皮を傷つけたとき出てくる白い汁を塗料としてつかったことに由来するといわれますが、塗料としての利用はほとんどなく、むしろ、葉にできる五倍子(ごばいし、ふし:付子、附子とも書く)の利用がはるかに有名で、フシノキという別名でも呼ばれます。五倍子というのは、ヌルデの若芽や若葉にヌルデアブラムシの仲間の幼虫が寄生し、その刺激でできた袋状の虫こぶのことで、この中に50~80%も含まれる多量のタンニンが医薬や媒染剤、皮のなめし剤などとして利用されます。中国では五倍子をとるためにヌルデが大量に栽培されていると書いた本もあります。また、昔の日本の既婚女性は「おはぐろ」で歯を黒く染めましたが、これは五倍子の粉を鉄汁に浸して作った黒色染料(ふしかね、付子鉄漿)のことです。

ヌルデは、その果実が酸味と塩味を持つことでも有名で、スノミ、シオノキ、シオカラノキ等の方言で呼ぶところがあります。これは成熟直前の果実の表面に分泌された白い粉の主成分であるカルシウム塩の味です。