ノグルミ  Platycarya strobilacea

ノグルミ(長居植物園(大阪市住吉区):2001.8.11.)

ノグルミ(長居植物園(大阪市住吉区):2001.8.11)

クルミ科* ノグルミ属 【*APGⅢ:クルミ科】

Platycarya:幅広の堅果 strobilacea:球果の

クルミの仲間はオニグルミやヒメグルミのような硬くて丸い実をつけるものだと思いこんでしまうと、公園や街路でふつうに見かけるシナサワグルミやノグルミがおなじクルミ科の樹木だとは信じられないのがふつうです。シナサワグルミの翼をもった果実はカエデ類を連想させますし、ノグルミの実(厳密には果穂)はオオバヤシャブシなどのハンノキの仲間を連想させます。オニグルミはオニグルミ亜科、サワグルミやノグルミはサワグルミ亜科に大別されるとはいえ、これらが同じ仲間だと結論した分類学者は大したものだと思います。

ノグルミは高さ20m以上、胸高直径数十cmに達する暖帯性の落葉樹で、日本では近畿地方から中国、四国、九州北部に分布し、外国では朝鮮半島、中国大陸、台湾にも分布します。大阪府下では、能勢、大和葛城、鉢ケ峰、牛滝などのあまり大きな撹乱を受けなかった日当たりのよい林縁や川沿いに生育していますが、それほどひんぱんに見かけるわけではありません。この木には長さ30cmほどの奇数羽状複葉の葉が互生し、小葉は長さ10cmほどで先端が細くのび、葉縁には重鋸歯があって著しく左右非対称という特徴がありますが、何よりも枝の先端にできる長さ3~4cm、直径2~3cmのハリネズミのような果穂(らせん配列した雌花の苞葉が開花後長く伸びたもの)が大きな特徴で、この果穂は翌年まで残り、これがあればノグルミとすぐに分かります。大きさ 5mmほどの種子はこの苞葉の腋にでき、偏平な翼があって風で散布されます。。

ノグルミにはノブノキという意味不明の別名があるほか、ドクグルミという別名がありますが、これはこの木の葉や樹皮を叩いて魚毒とし、川に流して浮いた魚をとって食べたことに由来します。また、ノグルミの赤褐色をした果穂には大量のタンニンが含まれていて、これの煮出し汁は動物の皮をなめすのに利用されました。