ネムノキ  Albizia julibrissin

ネムノキ(武田尾(宝塚市):1999.7.21)

ネムノキ (武田尾(宝塚市):1999.7.21)

マメ科*(ネムノキ亜科) ネムノキ属 【*APGⅢ:マメ科】

Albizzia :人名から julibrissin :東インド名

朝な朝な草刈りに行く河岸に合歓の花咲きて夏は来にけり  結城哀草果

ネムノキに合歓という漢字をあてて「コウカ」などと呼ぶのは、この木の中国名をそのまま持ってきたからだと思うのですが、何となくなまめかしく美しく、うす桃色の幻想的な花を咲かせるこの植物にふさわしい気がします。合う歓びというのは、夜、葉が閉じてくっつくことに関係しているのでしょうか。

ネムノキは日本特産の樹木ではなく、中国大陸、東南アジア、インドなどにも分布するマメ科の落葉高木です。和名の由来が夜になって葉を閉じることにあることはいうまでもありませんが、この木の特異性はやはり花にあるというべきでしょう。

ネムノキの花は一見するとタンポポの綿毛をうす桃色に染めたように見えますが、実はこれ全体が一つの花なのではなく、10 ~20 の小さな花が集まって一つの花のように見えている(頭状花序といいます)のです。しかも普通の花と大きく違うのは、普通の植物で一番目立つのは花弁であるのに対し、ネムノキの場合、長さ3~4cmのたくさんの雄しべが目立ち、花弁は小さく、雄しべの陰に隠れて事実上外からは見えないことです。

このように、雄しべが美しく目立つ花をつける植物はフトモモ科に多いのですが、アカシアなどマメ科のなかにもたくさんあって、豆果をつくるという意味でマメ科に含めるものの、特別なグループとしてネムノキ亜科とし、人によってはネムノキ科としてひとつの科に独立させることもよくおこなわれます(マメ科には他にジャケツイバラ亜科、ソラマメ亜科があります)。

ネムノキは日本の本州以南の山ではごくふつうに生育する木ですが、冒頭に紹介した和歌にあるように河岸などでよく見かけるのは、本来この木がやや攪乱のおおい二次林的な環境を好むせいかも知れません。したがって、市街地の並木や公園では生育がよくない場合が多く、「ねむの並木」をつくって、美しく成功している例は少ないように思います。