ナンテン Nandina domestica

ナンテン(正暦寺(奈良):2003.11.16.)

ナンテン(正暦寺(奈良):2003.11.16)

メギ科* ナンテン属 【*APGⅢ:メギ科】

Nandina : ナンテン domestica : 飼い慣らされた

南河内の天見や紀見峠あたりの人家は、急な斜面にくっつくように建てられている場合が多いのですが、 そんな家のほとんどの庭先や、道路に面した斜面に、たくさんのナンテンが植えられていてびっくりした記憶があります。 どうやら、ナンテンを切り枝にして市場に出荷している様子です。 そういえば、お正月を飾る門松や松竹梅の盆栽には必ずといっていいほどナンテンがそえられていて、 赤い実や紅葉した葉が彩りをそえています。何かいわれがあるはずだとおもって少し調べてみました。

ナンテンが薬用植物であることは「南天のどあめ」などという薬の広告が出ていたりしてご存知のかたも多いと思います。 薬用植物図鑑をみますと、果実は南天実(なんてんじつ)とよんで喘息や百日咳をしずめるのに使い、 また、中国では葉を感冒、百日咳、眼の腫痛、血尿に用いるなどと書いてあり、茎や根にもいろいろ薬効があるように書いてあります。

しかし、これだけではナンテンをお正月に使う理由として弱いような気がして別な本(上原敬二著:樹木大図説)を開いて見ますと、 ナンテンは縁起木、献歳植物で、「難を転ずる」、あるいは、ナルテンすなわち「万事成就する」に通じるとの理由で民俗上喜ばれている、 と記載がありました。 ナンテンには南天、南天竺、南天燭、南天竹(正式の中国名)などの漢字が当てられ、いずれも何となくおめでたい感じがするのも不思議なものです。

上原先生の本を見ますと、ナンテンには非常に沢山の品種があることに驚かされます。 果実の色(普通は赤色)に白や藤色があって、それぞれシロナンテン、フジナンテンと呼ばれることはどの図鑑にものっていますが、 その外に、葉の形やふ(斑)の入り方、色などに応じて何十種類もの品種が記載されています。 年末に天王寺の赤松種苗店へ行きましたら、お正月の盆栽用に10cm程の大きさの「赤南天」とか、 小葉の幅がめだって広い「お多福南天」というような品種が売られていました。お正月用の盆栽につかう特別の品種かも知れません。