ナンキンハゼ Sapium sebiferum

ナンキンハゼの紅葉(1999.11.27:泉大津市)

ナンキンハゼの紅葉 (1999.11.27:泉大津市)

トウダイグサ科* シラキ属 【*APGⅢ:トウダイグサ科ナンキンハゼ(Triadica)属】

Sapium: 粘性のある sebiferum: 脂肪のある

暖かな日が多かった今年もケヤキやポプラなどの紅葉(黄葉)が深まり、日に日に冬に向かって季節が進んでいるような気がします。そんな樹木にまじり、ナンキンハゼもすっかり紅葉してしまいました。

ナンキンハゼは公園樹や街路樹としてたくさん植えられており、名前は知らなくとも実物ごらんになった方は少なくないと思います。なかには、6月頃の花の時期に、ほとんど全部の枝先に細長い円錐状の花の房が付いているのを思い出す方もあるでしょう。

このように、ナンキンハゼはごく普通に見かける木でありながら、例えば、堀田先生の「野山の木」(保育社)にはこの木がのっていませんし、山の中を歩いていて、この木が自然に生えているのに出会うこともまずありません。それはこの木の原産地が中国で、山東、広東、雲南各省などにかけて分布する木だからです。ただ、日本の鮮新世や洪積世の地層からは種子の遺体が出ますので、大昔には日本にも生えていたのは確かで、この点、以前に紹介したトチュウと似ています。 元来、大阪よりも暖かい地方の樹木ですから芽の出るのも遅く、春になってほかの木が葉の展開を終わった頃やっと葉を出し始める、という具合で、サボリというか寝坊スケというか、そんな感じを持たせる木です。

奈良公園:1999.10.30 ”ナンキンハゼの果実(大阪府大:1999.12.1)"

ナンキンハゼの美しさの一つがその紅葉にある事は間違いありませんが、冬になって完全に葉を落とした後、ちょうどクリスマスの頃、枝いっぱいに白いタネをつけたようすもまた捨てがたいものです(右写真:ナンキンハゼの果実(1999.12.1 大阪府立大学)と紅葉(1999.10.30 奈良公園))。この木の種子の、特に白いロウ質の種皮には良質の脂肪が沢山ふくまれ、ある本によりますと40%位の歩どまりで油が取れ、ロウソクを作ったり、石鹸や頭髪油、潤滑油など幅広い利用がされているそうです。

ロウをとる木としてはハゼノキが有名ですが、ナンキンハゼという和名は中国産のロウをとる木というような意味になります。また、葉からは染料が取れ、生葉を2~3時間煮出した液で布を染めるとカ-キ色、黒褐色となり、褪色しないといわれ、さらに、材は狂いが来ず、家具や器具を作るのに適しているといわれます。