ムラサキシキブ Callicarpa japonica

ムラサキシキブ(1999.10.24:北山緑化植物園)

ムラサキシキブ(1999.10.24:北山緑化植物園)

クマツヅラ科* ムラサキシキブ属 【*APGⅢ:シソ科】

calli: 美しい + carpa: 果実 japonica: 日本の

樹木の名前の中には強烈な印象をもって飛び込んでくるものがありまが、 私にとってムラサキシキブはそんな樹木の一つでした。

大学に入ってただ一人植物生態学を専攻しましたが、私ひとりのための野外実習で、 教授だった吉良竜夫先生をはじめ先生方ぜんぶと院生総出で奈良公園を案内していただきましたが、 まだろくに植物の名前も知らない時にはじめて出合ったこの樹木の実の美しさと、名前の特異さから受けた強い印象は、 いまだに忘れることができません。そして属名 Callicarpa は「美しい果実」という意味だとも教わり、 無味乾燥と思っていたラテン語の学名も、わたしと同じ感動を秘めた「意味」をもっていることも知りました。

ムラサキシキブは大阪や奈良近郊の山々でもよくみかける潅木です。花も赤紫色をしていますが、 秋になるとその名のとおり、紫色の、とても美しい実をつけます。実の大きさは直径6~7mmあり、 対生した葉のつけねに数個ついています。ただし、実の数は木の生えている場所の日照条件などでかなり違うようで、 日当りの良いところの木ほどよく実をつけているように思います。

ところで、ムラサキシキブという名前で植木屋さんや花屋さんで売っているものの多くは、 実際はムラサキシキブではなく、ごく近縁のコムラサキです。 コムラサキはムラサキシキブに比べると果実の大きさがかなり小さいものの実のつき方がはるかによく、 また、長い期間枝についているので観賞価値が高いようです。 ムラサキシキブとコムラサキの区別は、花序(花が集まった枝)が葉柄のつけねから出ている(ムラサキシキブ)か、 葉柄のつけねから2~3mmはなれたところから出ているかで見分けることが出来ます。

なお、この両種には白い実のなる品種があり、シロシキミ、シロミノムラサキシキブなどとよばれています(右写真:北山緑化植物園(2001.10.23))

また、大阪近辺で見かけるムラサキシキブの仲間にはもう一種、ヤブムラサキがあり、 これは葉の表面にビロード状の毛が密生していることで区別できます。