ムクゲ  Hibiscus syriacus

ムクゲ(大阪市北区中津:1999.8.19)

ムクゲ (大阪市北区中津:1999.8.19)

アオイ科* フヨウ属 【*APGⅢ:アオイ科】

Hibiscus: ハイビスカス syriacus: シリアの

7月、8月に街を歩いていて、人家の庭さきや垣根ごしに何か目立った花が咲いている木を見たら、それはムクゲかサルスベリか、それともつる性のノウゼンカズラだとおもって間違いないかも知れません。それほど日本の真夏に花を咲かせる木の種類は少なく、それだけこれらの樹木が園芸的に重要だと言えるのかも知れません。

アオイ科のフヨウ属には、すぐに常夏の国を連想させるようなハイビスカスや、公園や庭にもよく植えられている低木性のフヨウが含まれていますが、その中でもムクゲは比較的寒さに強く、枯れることなくちゃんと冬を越し、高さ4m位に達します。この点、冬には地上部が枯れて、一見多年生草本の様に見えるフヨウとはちがいます。ムクゲが韓国の国花になっていることは皆さんよくご存じの通りです。

ムクゲやフヨウの花をみるたびに、何か不思議な気がします。それは、例えばサクラの花ですと、真ん中に雌しべがあって、その付けねから沢山の雄しべが生えているのに、ムクゲやフヨウ、ハイビスカスでは、先端が5つに分かれた雌しべがあって、その雌しべに直接雄しべの葯(やく)がくっついているようにみえるからです。つまり、雌しべと雄しべが一つになっているように見えるのです。これは、実は多数の雄しべの花糸が全部くっついて筒状になり、雌しべの花柱をつつみこんだ形になっているからです。ですから、雌しべの柱頭をつみとって、上手に花を壊していきますと、ちょうど刀をサヤから抜くように雌しべを抜き取ることができます。

ムクゲには一重だけでなく、半八重や八重咲きのものまで多くの品種がありますが、例えば半八重の花を分解してみますと、沢山の雄しべの一部がいろんな程度に花弁に変化していることがわかります。つまり、雄しべも雌しべも花弁も、みんな親戚の関係にあるわけです。
 花が八重咲きになるときには、ムクゲに限らずサクラでもバラでも、雄しべが(時にはガクも一緒に)花弁に変化しているのがふつうです。


いろいろな程度に弁化したムクゲの雄しべ