モクマオウ  Casuarina stricta

モクマオウ(大阪市大植物園:2001.9.16)

モクマオウ (大阪市大植物園:2001.9.16)

モクマオウ科* モクマオウ属 【*APGⅢ:モクマオウ科】

Casuarina:casuarius(ヒクイドリ:長く垂れ下がった枝がヒクイドリを連想させる)
stricta:直立した姿勢のよい、

わたしが「モクマオウ」を始めてみたのは、大学生の頃、学生実習で私市の 大阪市大理学部付属植物園へ行ったときです。 葉っぱ(本当は枝)はとても細いけれど、どう見てもスギナそっくりです。 しかし、話に聞いた古代の木性シダであるはずは絶対にないし、 かといって原始的とされるマツやスギなどの裸子植物ともどこかが違う、 いったい何に近い植物なのかと悩んだ記憶があります。とくに、 枝先につく小さく丸い球果は何となくヒノキの球果を連想させますが、 裸子植物とは確かに雰囲気が違うのです。それで、牧野の図鑑を開いて見ると、 ありました、裸子植物の次、被子植物のトップにモクマオウ科「トキワギョリュウ」 の和名で置いてありました。やっぱり、被子植物の中でも異端者扱いされているのかと、 変な納得をしたものでした。

モクマオウの仲間は東南アジアやオーストラリアの熱帯を中心に60種以上あるそうです。 はじめは花の構造が単純なこともあり、原始的な植物ではないかと考えられたようですが、 その後の研究により、今では、花の構造が単純なのはむしろ退化の結果と見るべきで、 分類的にはマンサク科との類縁があるとか、たぶんカバノキ科とヤマモモ科に類縁があろうと書かれるなど、 見かけほど原始的な植物ではないということになっています。

なお、日本に導入されたモクマオウ(Casuarina stricta) とC. cunningamiana(カンニンガムモクマオウ)はお互い非常によく似ていて、 和名や学名に混同があるそうです。たとえば、牧野新日本植物図鑑では トキワギョリュウにCasuarina equisetufoliumの学名を与えていますが、 平凡社の日本の野生植物(木本I)では、トキワギョリュウという名は本来 C. cunninghamianaにつけられたものだ、と記されています。

カンニンガムモクマオウ(C. cunninnghamiana)は熱帯から亜熱帯の海岸によく植えられていて、 とても大きな木になります。大分まえに、亡くなられた依田恭二先生(当時:大阪市立大学) の調査班の一員としてタイ国へ調査に出かけたことがありますが、 半島部の海岸で立派な木を見ました(右写真:タイ国南部 Ban Bang Sak海岸(1989.10.12))