マテバシイ  Lithocarpus edulis

マテバシイ(大阪市北区中津:1999.8.19.)

マテバシイ(大阪市北区中津:1999.8.19)

ブナ科* マテバシイ属 【*APGⅢ:ブナ科】

litho: 石の + carpus: 果実  edulis: 食べられる</h4>

マテバシイの果実はドングリそのもので、てっきりコナラ属の植物だと思ってしまいますが、 じつはシリブカガシ属という別な属に分類されています。この属は日本ではマテバシイとシリブカガシの2種しかありませんが、 世界的にみると、アジアや東南アジアの暖帯から亜熱帯にかけて50種から100種、 北アメリカに1種あるといわれるかなり大きな属です。 この仲間の果実(ドングリ)はどれもお尻のところが少し凹んでおり、短い果枝に穂状につくこととともに大きな特徴になっています。 むかし、ボルネオ島キナバル山に登ったとき、標高1100mぼどのところの ヘッドクォーター周辺で大きなドングリが落ちていましたが、みんなこの仲間でした。

 マテバシイは萌芽性がつよく、根元のところから株立ちになっている場合が多いようです。 成長は早く、また、大気汚染にも強いこともあって、一時、大阪の公園や学校などにも非常にたくさん植えられました。 葉の長さは5~18cmぐらい、分厚い革質で鋸歯はなく、縁はすこし外側へ反り返っています。 色は表面が濃い緑色、裏はやや黄味がかった緑色で、少し光沢があります。 この光沢は、同属のシリブカガシでは銀白色で特に目立ちますが、マテバシイではそれ程でもありません。

マテバシイのドングリには渋みがなく、同じシイという名を持つツブラジイやスダジイの果実と同様、 生でも焼いてでも食べられます。千葉県の加茂遺跡からは食べ跡のついたマテバシイの果実が出土しており、 イネが渡来する以前の重要な食糧の一つであったと考えらています。 現在、本州、四国、九州、沖縄などにひろく見られますが、薪炭材、器具材などとして古くから各地で栽培されてきたため、 本来の分布地域ははっきりせず、多分、九州と沖縄が本来の分布域ではないかと推定されています。