マンリョウ  Ardisia crenata

マンリョウ(万博記念公園日本庭園:2000.12.24)

マンリョウ (万博記念公園日本庭園:2000.12.24)

ヤブコウジ科* ヤブコウジ属 【*APGⅢ:サクラソウ科】

Ardisia:槍の先、矢先(葯の形から) crenata:円鋸歯状の

白い実をつけるマンリョウ(万博日本庭園:1999.12.12) 「千両万両ありどおし」というおめでたい語呂にあわせて、お正月近くになると 植木屋さんの店先に赤い実をつけたマンリョウが目立ちます。 センリョウもマンリョウも、またアリドオシも真冬の寒い時期に赤い目立った実を つけるのが好まれて、縁起物の植物として古くから愛好されてきました。 ただし、果実の色は品種によって白いものや淡黄色のものもあります(右写真:白い実をつけるマンリョウ(万博日本庭園:1999.12.12))

ふつうみかけるマンリョウは背がそれほど高くなく、大きいものでも数十cm のものが多いようです。形態上の大きな特徴は、まず直立した茎が一本たち、 葉や枝が茎の先端部にむらがってついていることです。 マンリョウの枝は幹に比べて細く、また寿命がそれ程長くなくて、 多くはいずれ幹から落ちてしまいます。ですから、他の樹木のように枝が どんどん伸びていくということがあまりありません。また、赤い実を付けた枝 (果枝、むしろ花序というべきもの)も実を落とした後で幹から落ちてしまいます。 そのため、木が古くなると幹ばかりが目立つ変な樹形になります。 園芸書を読むとそのようなマンリョウは幹の途中で取り木をし、 短くするとよいと書いてあります。

マンリョウの葉も他の樹木と多少違った特徴をもっています。 やや上面にそり返えった葉の上面で緑色が濃く下面で薄いことはそれほど珍しく ありませんが、葉の縁には低い鋸歯がたくさんあって、 鋸歯と鋸歯の間に内密腺と呼ばれる小さな点々があります。 少し古い本を見ますと、ここには空気中の窒素を固定するバクテリア (葉瘤(ようりゅう)菌)が共生していると書いてあります。 しかし最近の本には全くこの点に触れられておらず、葉瘤菌説は否定されたものと 思われますが、こんな説を出したくなるほど面白い特徴だといえるでしょう。

マンリョウは犬鳴山など大阪南部の山地や丘陵地で採集記録があり、私も、神社の森や雑木林の中で時々実生があるのを見かけたことがあり、また、むかし、和歌山県の新宮市にある浮島の森 (国指定の天然記念物)を調査したときには、かなり沢山見ました。 いずれも、たぶん鳥が種子を運んできたものと思いますが、元来の分布の中心域が大阪より 多少暖かいところにあるのかもしれません。