キョウチクトウ  Nerium indicum

キョウチクトウ (大阪府立大学 1999.8.23)

キョウチクトウ科* キョウチクトウ属 【*APGⅢ:キョウチクトウ科】

Nerium:キョウチクトウに対するギリシャ語の古い名 indicum:インドの<

細長くて厚つぼったい葉を3枚づつ輪生させ、夏の間じゅう、株全体に紅い花をつける キョウチクトウは、夏を代表する花として昔から大変親しまれている植物です。 インドから中東、地中海地方にかけての原産とされ、日本へは中国をへて江戸時代 に導入されました。

この木は大変親しまれている一方で、1965年前後の大気汚染の激しかった ころから、何となく白い目でみる人がふえて来ました。それは、当時、 キンモクセイやサクラなど、他の木がどんどん弱って行くのに、この木だけは 全く平気で、今までどおり盛んに花をつけるため、何となく無気味な生命力を感じた せいかもしれません。おまけに、図鑑には有毒植物だと書いてあるものですから、 多くの都市で「キョウチクトウの花粉がぜん息の原因になるから切って欲しい」 との声がでて、かなりの木が切られたりしました。実際は、花をほぐして見ればすぐに わかるように、この木の花からはほとんど花粉が出ず、ぜん息原因説はいわれのない言い掛かり だったのです(ただし、この木の枝でハシをつくったり、紅茶をまぜるのに使うと中毒するおそれが あるそうです)。

キョウチクトウはもともと夏の乾燥の激しい地方の植物で、葉の構造も乾燥に耐えられる ようになっています。たとえばふつうの植物では、空気の出入りする気孔は葉の裏の表面にむき出し になっていますが、キョウチクトウではややくぼんだ穴の中にあり、しかも、細い毛でおおわれていて、 無駄に水分を放出しない構造になっています。このような構造が亜硫酸ガスなどの汚染物質に対しても 有効だったのかも知れません。

ところで、ふつうに見かけるキョウチクトウは桃色の花をつける八重咲きのものですが、 最近は純白や鮮やかな桃色、濃赤色などの一重の花をつけるものもよく見かけるようになりました。 図鑑にはキョウチクトウのほかセイヨウキョウチクトウ (N.oleandar) という別種が記載されて おり、一重咲きのものがこれにあたるかと思ったりしましたが、必ずしもそうとはいえないようです。 実際、両者の区別は大変難しく、それほど本質的な違いがあるのかどうか疑問です。昔からこの仲間を研究 してきた元・大阪市大植物園の立花吉茂先生(故人)は、 セイヨウキョウチクトウを基本種とし、indicum をその変種としています(朝日園芸百科14)。


様々な花色のキョウチクトウ(いずれも大阪府立大学 1999.8.7)