クズ  Pueraria lobata

クズ(吹田市・紫金山公園:2003.9.17)

クズ (吹田市・紫金山公園:2003.9.17)

マメ科* クズ属 【*APGⅢ:マメ科】

Pueraria: 人名(Puerari)から lobata: 浅裂した

秋の七草のひとつであるクズが樹木かどうかについてはいろいろ意見もあるでしょうが、茎の中には何年も生き、年々肥大していくものがありますから、樹木のカテゴリーにいれてもそれほどおかしくないと思います。事実、日本の古木、老樹をあつめた少し古い本を見ますと、伊豆大島・春日神社の根もとの幹周りが 70 cm(直径20 cm)のクズが写真入りでのっています。20cm は極端としても、大阪でも幹の直径が4~5cmになったものをみることも珍しくありません。

クズは、ある場所にいったん根を下ろしますと長いつる性の茎をどんどん伸ばし、他の樹木の幹に巻きついて樹冠の上の方までのびていって葉を広げます。そのため、クズに被われたほうは日陰になって成長が著しく阻害され、極端な場合枯れてしまいます。また地面を這っているときは節のところから不定根をおろし、そこから水や栄養分を吸収しますので、仮に根もとのほうが枯れても、先のほうが枝分かれしながらどんどん伸びていけます。そのため、斜面の土壌浸食を防ぐ作用が大きく、アメリカでは砂防と家畜の飼料を目的としてクズを導入したのですが、日本と同じように、場所によっては繁殖し過ぎてコントロールに困っていると聞いています。

クズの根は大きく肥大し、大きなものは赤ん坊ぐらいになるそうです。私も、むかし、千里NTの中の数年間放置された場所で、子供の腕ぐらいになったものを取ったことがあります。

クズの根の皮をはぎ、適当な大きさに切って乾燥したものが葛根(かっこん)で、漢方で発汗、解熱、緩和薬とされ、ふだん健康な人の頭痛や肩こりを伴う感冒に卓効があるとされます。主成分のクズの根に、麻黄・桂枝・生姜・甘草・芍薬・大棗(たいそう)を加えて煎じた葛根湯(かっこんとう)は漢方薬の中でももっとも有名なもので、薬草図鑑などには、上記の感冒のほか乾性の皮膚病、小児はしか、神経痛、じんましんなどきわめて広い応用範囲を持つと記されています。

また、クズでんぷんは滋養剤とするほか、結合・崩壊がよいので、錠剤をつくるときの良質の薬として使用されます。日本産だけでは全く不足しているので、中国から多量のクズが輸入されていると薬学の先生に聞いたことがあります。