クサギ  Clerodendrum tricotomum

クサギ(2002.8.25)

クサギ (服部緑地 2002.8.25)

クマツヅラ科* クサギ属 【*APGⅢ:シソ科】

Clerodendrum:運命の木 tricotomum:3分岐した

クサギは高さ数メートルに達する落葉樹で、アカメガシワやイヌビワなどとおなじように、川沿いや道ばたなどの撹乱の多い環境に多く生育します。その名のとおり、若い葉をつむと一種独特の強烈な臭気があって思わず顔をそむけてしまいます。必ずしも悪臭というわけではないのですが、たとえばクスノキのような質の芳香ではなく、この香りの成分を抽出して薬に使うということはないようです。しかし、花や実の美しさを考えるとこの名前が少し気の毒な気がするのは、同じように強い匂いと可憐な花を持つヘクソカズラと同じかもしれません。

神戸森林植物園:2011.11.13 クサギが属するクマツヅラ科は合弁花類で、一見、5枚の花びらがあるようにみえるクサギの花も、その根元の方は筒状になっていて、5枚の大きな萼に包まれています。この花の特徴は、非常に長い4本の雄しべと1本の雌しべがあることで、いずれも花筒から長く突き出ており、花の華やかさと美しさに貢献しています。また、花が終わった後、5つに分かれて肉質になった赤い萼片が花びらのようにも見え、その真ん中にできた碧色の丸い果実もずっと長い間ついていて鑑賞価値が高く、ヨーロッパでは庭木として植えられています(右写真:神戸森林植物園 2011.11.13)

クサギは葉の展開が他の木よりかなり遅く、また、開花も7月下旬から8月の暑い夏になってからで、多くの花木にくらべて遅いように思います。さらに、秋になってもなかなか落葉せず、霜がおりて葉が黒く痛んでやっと落ちる場合が多く、日本の気候にうまく適応していないという印象を受けます。そういう目で各地の熱帯温室にはいりますと、ゲンペイクサギやときどき野外で植えられているヒギリなど、クサギと同属の花木がたくさんあり、この仲間が熱帯地方を原産地としていることを容易に想像させます。クサギはこの仲間の中では最も寒い環境にまで進出した種といえるのかもしれません。