クロモジ  Lindera umbellata

クロモジ(京都府立植物園:2000.4.2)

クロモジ(京都府立植物園:2000.4.2)

クスノキ科* クロモジ属 【*APGⅢ:クスノキ科】

Lindera :人名(J. Linder)から umbellata :散形花序の

クロモジは金剛・生駒山系や奈良公園などにも多いクスノキ科の雌雄異株の低木で、 高さ1~2m、大きいものでは4~5mに達します。葉は羊紙質でうすく、表面は濃緑色で裏面はやや白色をおびていて、 ごく若いときには表裏とも毛がありますがやがて落ちてしまい、成葉ではほぼ無毛となります。大きさは幅が1.5~4.5cm、 長さ4~10cmの長楕円形で先端はとがるかやや突出し、基部はくさび形になっています。 早春、4月頃に新芽と共に花を咲かせますが、花被(花弁やガク)は黄緑色で約10個の花が一つのかたまりをつくり、 そのかたまりが枝先に幾つもくっついた形になっています。この点は他のクロモジ属の植物、 例えばヤマコウバシ、アブラチャン、ダンコウバイなどとよく似ています。

クロモジの枝は黄緑色で、ところどころにススで汚れたような黒い斑点ができます。 この斑点は枝の表面に菌類が着生したもので、クロモジという名前はこの模様を文字に見立てたものだという説がふつうです。材の中には揮発性の芳香成分があり、枝を折ると強い香りが漂います。 この芳香は枝が乾燥した後でも残っているので、クロモジの材を皮付きで削って楊子(ようじ)とし、 昔から賞用されてきました。そしていつの間にかクロモジは楊子の別称となりました。

クロモジの名前については、昔宮中に使えた女官たちに語の一部に「もじ」をつけるいいかた (例えばしゃもじ、かもじなど)があり、本来、黒楊子とか黒木とよばれていた楊子を「黒もじ」 といったことに由来するという説もあり、それなりに説得力があります。

クロモジには葉の大きい変種、オオバクロモジ(var. menbrancea)があり、 北海道、東北、関東、北陸に分布するとされています。しかし、中間的なものがたくさんあって区別は困難だといわれています。