コウヨウザン  Cunninghamia lanceolata

コウヨウザン(神戸森林植物園:2000.8.31)

コウヨウザン (神戸森林植物園:2000.8.31)

スギ科* コウヨウザン属 【*APGⅢ:ヒノキ科】

Cunninghamia:人名(カニンガム)から lanceolata:披針形(ひしんけい)の

コウヨウザンということばだけでは、どこかの山か相撲とりの名前のように聞こえますが、 「広葉杉」という字を見ると、これが木の名前で、しかもスギの仲間だろうと見当がつきます。 しかし、日本のスギを頭にえがいてこの木を探しても、たぶん見つけることはできないでしょう。 太い木の樹皮は似ていますが樹形が違い、エキゾチックな雰囲気を持っているからです。

日本のスギは、一見、紐のような枝ばかりが目立ち、どこに葉があるのかと思います。 これは、スギの葉が短い三角形のトゲのような形で、枝や若い幹にぴったりくっついてるからです。 一方、中国南部から台湾に原産するコウヨウザンは、一本の直立する幹から何本もの枝が輪生し、 さらにその枝から側枝がでて、それに長さ 5cm、巾 0.5cmほどの鎌形に曲がった平たい葉がほぼ2列にならんでついています。 葉の表面は緑色で光沢があり、裏面には中肋をはさんで2本の白い気孔線があります。 コウヨウザンの葉は枯れても幹や枝からなかなか落ちず、しかも先端が鋭くとがっているため、 手で触ると刺されて痛く感じます。この葉にはたくさんの精油分が含まれているのか、 交野市私市にある大阪市大植物園に住んでいたとき、枯れ葉のついたコウヨウザンの落ち枝を集めて風呂で燃やしたところ、 非常に勢いよく燃えたことをおぼえています。

ところで「広葉杉」というのは日本でつけられた名前で、正式の中国名ではありません。 中国ではコウヨウザンに「杉木」(あるいは単に「杉」)という名をあてています。

コウヨウザンにごく近い変種に台湾原産のランダイスギ(巒大杉 C. lanceolata var. konishii)があります。 コウヨウザンよりやや小さな葉がらせん着生し、また、幹につく葉には表面にも2本の細い気孔線があり、球果鱗片の形も違う とされています。ただしこの二種はお互いよく似ていて、わたしには一見して両者を区別できる自信はありません (中国高等植物図鑑にはこの変種の記載はありませんので、無理に区別しなくてもいいのかも知れません)。 どちらも成長が早くて直径0.3~1m、高さ30mに達し、中国、台湾では重要な造林樹木だそうです。