コブシはモクレンの仲間で、早春をつげる木の一つの代表です。すこし寒い地方の山の中にも自生が多く、すらりと背がたかく、また、新葉を出す前に木全体に白い花をつける姿は、冬枯れの山の中ではとくに目立つものです。また公園樹や庭木としても非常に好まれ、各地に植えられています。
モクレンの仲間で、早春に白い花をつけるものは案外種類が多く、また、お互いよく似たところがあるので、少し整理しておくことにします。
(イ)ハクモクレン (M. denudata)
中国原産の木で、多くは庭木として栽培されていますから、山の中で見ることはありません。ここにあげた4つのなかでは一番早く咲きます。ガクと花弁は同形同大で、全部で9枚あります。主幹はあまり目立たず、樹形は横に広がったようになり、枝はやや太く、数も少ないようです(写真:堺市百舌鳥学園町(2000.3.18))。
(ロ)コブシ (M. Kobus)
ガクは小さくてあまり目立たず、6枚のやや細い花弁があります(花弁の数は7~12枚位になるときもあります)。ふつう、花のすぐ下のところに1~2枚の小さな緑葉がついているのが特徴です。
(ハ)シデコブシ (M. stellata)
ヒメコブシともいい、木の形や葉の形など、コブシとそっくりで、花の無い時に区別するのは困難です(ただし、シデコブシの若い枝には密に毛があるのに、コブシは無毛なので、よく注意すればわかります)。花には花弁が12~18枚もあり、遠くからでも区別ができます(写真:大阪府立大学(2000.4.4))。花弁がやや桃色に色付いた品種もあります(写真右:(2000.4.4)))。
(ニ)タムシバ (M. salicifolia)
やはり直立タイプの木で、早春に白い花をつけます。ごく小さい時の枝は細く、暗緑色です。葉は他のものより細長くなっています。噛むと弱い渋みとともに甘みがあり、カムシバとかサトウシバという名前もついています。奈良あたりでみかける白い花を付けているのは、多分これだと思います(写真:神戸森林植物園(2001.4.2))。