キンカン  Fortunella margarita

キンカン(大阪市平野区:2005.4.7)

キンカン (大阪市平野区:2005.4.7)

ミカン科* キンカン属 【*APGⅢ:ミカン科】

Fortunella:人名(Fortune)から margarita:真珠のような

はじめてキンカンを食べたのは小学生の頃だったと思うのですが、そのとき、父親が「ミカン実食(く)て皮ほかす。キンカン皮食て実ほかす」という囃子ことばのような対句を教えてくれました(ほかす=捨てる)。キンカンの皮はミカンの皮の味がしますがはるかに甘くておいしいのに対し、実の方は袋が堅くタネがあり、無理に食べると苦い味がして食べられません。まったく父親のいうとおりだと思ったせいか、その後はキンカンを見るたびに、条件反射的に「キンカン皮くて‥」ということばが出てきます。

キンカンはミカン類に非常に近い植物ですが、果実が非常に小さく、室数(袋の数)が少ないこと、葉は単葉で小さく、葉脈が不明瞭なこと、果実の表面がなめらかなことなどいくつかの理由により、ミカン属とは別のキンカン属に分類されています。普通、高さ1~3mに達する常緑性の低木で、日本では数種類が栽培されています。いずれも細かく枝分かれし、ミカン類が5月に開花するのに対し7~9月くらいの間に2、3回開花し、大阪付近では3月頃黄色く熟します。また、ミカン類の枝にはふつう鋭い大きなトゲがあるのに対し、キンカン類ではトゲは小さいか、種によってはトゲがありません。キンカンという名前は、キンカン属の総称とされたり、たとえばナガミキンカンなど、キンカン属のなかの特定の種の異名とされたりしますが、後者の場合、具体的にどの種をさすかは図鑑によって多少異なります (野生植物の分類基準からいえば、全部おなじ種と考えてよいという説もあります)。

キンカン類は中国大陸原産の植物で、日本にはマルミキンカンが鎌倉末期または室町初期に導入されたと推定されていますが、その後、甘くておいしいニンポウキンカン(寧波(ニンポウ)金柑、ネイハキンカンともいう)やナガミキンカンが導入され、現在はこの2種がおもに食用または観賞用に栽培されてます。