カヤ  Torreya nucifera

カヤ(東京後楽園:2000.7.22)

カヤ (東京後楽園:2000.7.22)

イチイ科* カヤ属 【*APGⅢ:イチイ科】

Torreya:人名(Torrey)  nucifera:堅果をもった

カヤの葉(長居植物園:1999.9.5 カヤの実(長居植物園:1999.9.5 「榧の木山の榧の実は、いつかこぼれて拾われて」と北原白秋がうたったカヤの木とはどんな木だろうと長い間思っていましたが、 大学に入って奈良公園に野外実習へ行き、はじめて実物をみました。 はじめ、モミの木かと思いましたが、葉に中肋が目立たず、その先が鋭い一本のトゲになっているので、 二つに分かれているモミやツガとは違うことを教わりました(カヤの実と葉 長居植物園:1999.9.5)

カヤの大木(東京後楽園(20007.21) その後、あちこちでカヤの木を見る機会を重ねていきますと、川沿いなどに結構大きな木が残っていること、 マツ科の樹木とは違って樹皮が薄く縦に剥がれる性質があること、 また、株元からひこ生えのように沢山の幹が立ち上がる性質があることなどを知りました。 大きな木では直径が数十cmに達するものを見ることがありますし、 場合によっては直径が2mを超すものもあるそうです。先日、東京の後楽園へ行きましたが、園内に見事なカヤが数本ありました(写真:東京後楽園(2000.7.21))。 雌雄異株で、雌木には指の先ほどの楕円形の実がなり、実から油を取ったり、 炒って食べたりします。また、材の木目は美しく、碁盤や将棋盤の材料として最高のものとされています。

カヤの木自身は先に述べたように太く大きくなりますが、これとごく近縁の変種にチャボガヤがあります。 チャボガヤの葉はカヤそっくりですが幹はそんなに太くなることはなく、枝元から何本にも枝分かれして横に広がったような樹形になります。 雪に押さえられて地面に枝が着いたところから根を出す伏条性とよばれる性質があります。 日本海側の多雪地帯に多く見られるようで、私もかなり前に滋賀県の北のほうのブナ林を調査にいったとき、 山の中で始めてみました。このような樹形をとる物は他にもあって、 中でも有名なのはユキツバキです。カヤとチャボガヤとおなじように基本種のツバキと多雪地帯型のユキツバキという関係になっています。 チャボガヤは、図鑑で見ますと大台が原山などにも成育していることになっていますが、 大台では気が付きませんでした。