カツラ  Cercidiphyllum japonicum

カツラ(京都府立植物園(京都市):2005.11.23)

カツラ (京都府立植物園(京都市):2005.11.23)

カツラ科* カツラ属 【*APGⅢ:カツラ科】

Cercidiphyllum: ハナズオウのような葉 japonicum: 日本の

カツラは日本の温帯性気候を代表する落葉樹のひとつで、2種で1属1科を構成する、比較的原始的な特徴をもつグル-プとされています。

萼や花弁のない風媒花で、水分要求がかなり高いためか、湿気の多い谷沿いに点々と生え、ブナやミズナラのような広い森林をつくりことはありません。この点トチノキやオニグルミなどとよく似ています。非常に大きくなる木で、高さ30m、胸高直径2mを越える木もそれほど珍しくありません。太い幹の回りにたくさんのひこばえが生えることが多く、特徴のある樹形となります。東北地方や中部地方を旅行中、列車が谷あいを通るときなど、車窓からでもよく見分けることができます。

一見対生のように見えるカツラの葉((2000.5.22) カツラには長枝と短枝があり、長枝には葉が対生しています。冬に落葉したあと、翌年には対生していた葉のつけねにあった芽が発達してそれぞれ短枝になりますが、それらの短枝には葉が1枚づつしかつきません。そのため、全体としてみますと、右の写真(神戸市立森林植物園:2000.5.22)のように、どの枝(長枝)にも葉が対生しているようにみえます。また、多くの樹木では長枝の先端にある芽(頂芽)が翌年もどんどん伸びて行くのですが、カツラの場合頂芽が発達せず、すぐ下の対生した葉のつけねにあった芽が新しく伸びてきます。そのため、一見、二叉、二叉というふうに枝分かれしたように見え、独特の樹形になります。

もうずいぶん前になりますが、近大の薬学部の先生と一緒に東北地方を回ったことがあります。そのとき、カツラの葉を乾燥させて線香をつくること、カツラの近縁種にヒロハカツラがあることを知りました。ヒロハカツラの分布はカツラより狭く、中部地方以北にかぎられます。両者の区別は、種子の一端に翼がつくか両端につくかでできるそうですが、決定的ではないそうです。

学生の頃、メタセコイアの研究で有名な三木茂先生が、シキミとカツラは実の付き方が一方は合着し(シキミ)、一方は離生している(カツラ)だけで基本的にはそっくり同じだといわれたの聞き、なるほど偉い人というのはこんな見方をするものかと非常に感心したこともおぼえています。