カリン  Chaenomeles sinensis

カリン(長居植物園:2006.11.4)

カリン(長居植物園:2006.11.4)

バラ科*(ナシ亜科)ボケ属 【*APGⅢ:バラ科】

Chaenomeles: 裂けたリンゴ sinensis: 支那の

むかし、高槻市の神峰山寺へいくと、境内にある数本の若い、勢いのあるカリンの木を見るのが楽しみでした。当時、直径が20cmぐらいはあったでしょうか、なめらかな樹肌に様々な色合いの雲紋状のもようが出ていて大変美しく、また、まるである種の熱帯の木の板根のように、幹がかなり上のほうからひだ状になっているのが目を引きました。(写真:神峯山寺(高槻市:2008.3.29))

吹田市江坂(2005.4.10.) カリンは冬から早春にかけて花を咲かせるカンボケやボケと同じ属に属する中国原産の樹木で、日本へは平安時代には導入されていたと考えられています。3月頃、少し葉が出かかった頃に、幹や枝の上の方に薄桃色の花を咲かせますが、花の位置が高いせいか、あるいは花の数そのものがあまり多くないせいか、ボケほどのはなやかさはありません(右写真:吹田市江坂((2005.4.10))。ただし、花の形は同属のボケによく似ており、類縁関係の近さを実感させます。秋の終わりにはリンゴ程もある大きさの黄金色のみごとな果実をつけ、ゴロゴロ地面に落ちてきます。大変いい匂いがし、部屋の中においておくと家中がその匂いで満たされます。色や形やその匂いから、ついリンゴのように噛りつきたくなるのですが、果実には石細胞が多くて大変堅く、ふつうの包丁では切ることが困難です。むかし、私市の植物園に勤めていた頃、タネをとってみようとして、結局、金槌で叩いて果実を壊した記憶があります。

カリンの果実には咳を止める薬用成分が含まれており、輪切りにした果実を砂糖とともに煎じて飲むと効果があると書いてあります。また、焼酎につけて果実酒にするといい匂いのお酒ができるそうです。