カラタチ  Poncirus trifoliata

カラタチ(大阪府立大学:2000.10.12)

カラタチ(大阪府立大学:2000.10.12)

ミカン科* カラタチ属 【*APGⅢ:ミカン科】

Poncirus:ミカンの仲間のギリシャ名 trifoliata:3出葉の

カラタチという木の特徴は、北原白秋の詩と山田耕筰の曲でよく知っていましたから、はじめてこの木を見たとき、すぐにそれと分かりました。これほどトゲが大きく、鋭く、木ぜんたいがトゲばかりという感じの木はなかなか他に見つけることができません。

カラタチという名前がカラタチバナの短縮形で、唐の橘という意味だという説があるように、カラタチは中国中南部原産の落葉小高木です。万葉集にすでにその名があることから分かるように、日本へは大変古い時代に渡来したものと思われます。柑橘(かんきつ:ミカンの仲間)類の中では耐寒性が強く、日本では東北地方から南で栽培されていまです。大変鋭いトゲをもっていますから、原産地の中国でも、日本でも、また欧米でも外敵進入防止用の生け垣樹種としてよく使われます。

大阪府立大学(1999.8.4) カラタチの特徴がその強大なトゲにあることはいうまでもありませんが、このトゲが何であるかについては、分類・形態学者の間で意見が異なります。すなわち、トゲのでる位置が葉のすぐ上であることから、これは枝の変化したものであるという説(たとえば郡場:植物の形態、北村・村田:原色日本植物図鑑木本編など)と、葉とトゲのなす角度、トゲの付け根にはっきりとした芽があること、トゲのない葉の葉腋にある芽からでた第1葉の位置関係などから、これは葉の付け根にある芽の第1葉が変形したものであるとする説(たとえば原ほか:植物観察入門、佐竹ほか編:日本の野生植物(木本編)など)がそれです。カラタチの枝を切り取ってしげしげ見てみますと、私には、あとの説の方がやや説得力が強いように思えます(右写真:大阪府立大学(1999.8.4))

カラタチはミカンやオレンジなどの柑橘類を接ぎ木するときの台木として広く用いられています。これは、カラタチ台だと細根が多いため定植後の植え痛みが少なく、若木の生育がよい、結実期に達するのが早く、多くの柑橘類で豊産性になる、果実の着色が早く、果皮が薄く、果色は濃厚となる、また、果汁は甘みに富むなど長所が多いためです。その反面、ユズ台やナツミカン台にくらべると樹勢が弱く、寿命が短いという欠点もあるともいわれています。