カナメモチ Photinia glabra

カナメモチ (箕面公園:2003.12.30)

バラ科* カナメモチ属 【*APGⅢ:バラ科】

Photinia: 輝く(葉の表面が) glabra:無毛の

カナメモチの果実:大阪府立大学(2000.12.18.)カナメモチの花:大阪府立大学(2000.5.17) カナメモチは大阪近辺の山にたくさん生えているバラ科の低~中木です。硬い葉のふちに細かな鋸歯(きょし)があり、おもて裏ともに毛がありません。ちょうど梅雨期に樹冠一杯に小さな白い花を咲かせますが、この花の様子をソバの花に見立てて「ソバノキ」という別名がついており、枕草子にも名前が出てきます(ソバノキという名前は、実の形の類似からブナにも当てられることがあります)。「モチ」という名前がついていますがモチノキ科の樹木ではなく、バラ科に属します。秋に濁った赤色の味がたくさんなりますが、実の形の基本的な構造はカマツカなどとそっくりです(写真左:カナメモチの花(大阪府立大学(2000.5.17)、写真右:カナメモチの果実(2000.12.18))

カナメモチという名前は、材が堅く、これで扇の要(かなめ)を作ることからきたという説があります。しかし、扇の骨を作ることはあっても本当にかなめを作ったかどうか必ずしもはっきりしません。むしろ、アカメモチがなまってカナメモチになったとする説のほうが有力です。

カナメモチの新芽:大阪市北区中津(2013.3.21) アカメモチはその名のとおりこの木の新芽が赤い色を帯びていることからきています。これは新芽の中に沢山のアントシアンが含まれているからですが、やがて葉の中にクロロフィル(葉緑素)がふえてくるにつれ赤色が目立たなくなります。新芽の赤色の程度には個体によって著しい差があるようで、褐色にちかいものもよく見かけます。しかし、中には真紅と表現してもおかしくないほど鮮やかな色の新芽を出すものがあり、園芸的に「ベニカナメ」とよばれ、生け垣によく使われています。このような園芸品種はもちろん挿し木で殖やされます(写真:カナメモチの新芽(大阪市北区中津(2013.3.21))

カナメモチは、公園や庭園で単木として使われることがないわけではありませんが、ほとんどの場合、生け垣として用いられています。生け垣樹種としての適性の第一はなんといっても萌芽力の強いことで、強い刈り込みに対してもすぐ新芽を出せなければなりません。カナメモチは当然この性質を備えています。夏の終わりに真っ直に刈り込まれたベニカナメの生け垣から萌芽した真っ赤な新芽が秋の青空に映える様子はたいへん美しく、魅力的なものです。