カマツカ  Pourthiaea villosa var. laevis

カマツカ(奈良公園:2010.5.1)

カマツカ (奈良公園 2010.5.1)

バラ科* (ナシ亜科)カマツカ属 【*APGⅢ:バラ科】

Pourthia: 人の名前 villosa:長軟毛のある laevis:無毛の

奈良公園(2007.11.7) 大台ヶ原山(2001.6.10) カマツカにはウシコロシという恐ろしい別名がありますが、 これは決してウシをもころす有毒植物だということではありません。 昔は、堅くて粘り強いこの木の枝をたわめて、牛の鼻輪を作ったことに由来する名前で、 和名カマツカも、同じように折れにくいこの木をつかって鎌や鋤の柄を作ったことからきています。 大阪近辺の山にはきわめて普通に見られる木で、これひとつ覚えるだけで、 山の中の知り合いが急にふえることうけあいです。 4月から5月にかけて白い小さな花を散房状にさかせ、一つ一つの花は5枚の花弁、多くの(20本)おしべなど、 バラ科の特徴をよくもっています。また、秋には真っ赤な実をたくさんつけ、私たちの目を引きつけます(左写真:大台ヶ原山 2001.6.10、右写真:奈良公園 2007.11.7)

大阪の近くで見かけるカマツカの典型的な葉は、長さ5~7cmぐらいで比較的小さく、 形もややヒシ型をした感じのものが多いように思います。 葉の縁(ふち)には不規則なこまかな鋸歯(きょし)があります。 また、新芽が出たときは葉の表面が毛で被われているのですが、 これはやがて脱落し、夏にはほとんど無毛となります。 ただし、カマツカには変異が多く、葉が少し大きく、葉の裏が毛でおおわれたワタゲカマツカや、 中間的なケカマツカなどが区別されていますが、これらの境界は必ずしも明確ではありません。

ところで、イチョウやアオハダ(モチノキ科)ほどではありませんが、 カマツカでは長枝と短枝が比較的はっきり分かれていていますので、この特徴を知っていますと便利です。 長枝と短枝というのは、先端に芽をもった枝がどの様に伸びていくかによって、 毎年長く伸びていくものを長枝、毎年ほんの少ししか伸びないものを短枝と呼んでいるものです。 短枝では節間(葉と葉のあいだ)が短いものですから、枝の先端に3~5枚の葉 が集まってつく(束生する)ことになり、長枝にまばらにつく葉とは違った感じになっています。