ジンチョウゲ Daphne odora

ジンチョウゲ(2000.3.3:堺市百舌鳥梅町)

ジンチョウゲ(2000.3.3:堺市百舌鳥梅町)

ジンチョウゲ科* ジンチョウゲ属 【*APGⅢ:ジンチョウゲ科】

Daphne= ギリシャ女神の名前 odora= 匂いのある

ジンチョウゲは、2月か3月ごろのまだ寒いうちから花を咲かせ、大変強い匂いを発散させますので、 この匂いをかいだだけで春の到来を感じる人も多いことでしょう。 中国原産の常緑低木で、図鑑によりますと、室町時代に日本に入ったものだろうとされています。

和名のジンチョウゲは「沈丁花」で、沈香のようないい匂いがあり、丁子(ちょうじ)のような花をつける木、というような意味です。 一方、中国ではその匂いをめでて「瑞香」という大変素敵な名前がついています。 むこうの図鑑を見ますと、Daphne 属の植物には全部「○○瑞香」と名前がついています。

ジンチョウゲの花(2000.3.3:堺市百舌鳥梅町) ジンチョウゲを庭に植えておられる方はよくご存知のように、この木にはふつう実がなりません。 それは、この木が雌雄異株であり、しかも、日本にあるものはほとんどが雄木で、花が咲いても実を結ばないからだ、といわれています。 しかし、中には実のなる雌木のジンチョウゲもあるようで、実の色は赤く食べると辛い味がするそうです(右写真:ジンチョウゲの花(2000.3.3 堺市百舌鳥梅町))

故・上原敬二先生の「樹木大図説」という本は上中下3冊からなり、1冊がそれぞれ1000ペ-ジを越え、 大体どんな木のことでも載っているという感じのする超人的な労作ですが、 そこには実のなるジンチョウゲをめぐるエピソ-ドがいろいろ書いてあります。

例えば、この木はもともと両性花だったものが単性花へと分化が進んだものであり、 中には分化が不完全で結実する花があっても不思議はない、小石川植物園近くの朝比奈氏宅でみた木には2、3個実がなっていたが、 きっとこんな風にして結実したのだろう、という牧野博士の説や、 実のなるジンチョウゲを見たいと10年以上も思っている、と誰かに話したところ、 その人は近所のジンチョウゲは毎年実をつけている、というので早速見にいったら(3月)、確かに緑色の実がなっており、 6月には赤く熟していた、という上原先生の経験などです。

ジンチョウゲの花(形態学的には花弁ではなく萼(ガク)だそうです)は外側が赤紫色で、花が開くと内面は白色です。 しかし、花の外側が白い品種もありますし、葉の縁が黄色くふち取りされた斑入りの品種もよくみかけます。