ジャケツイバラ  Caesalpinia spiaria

ジャケツイバラ(奈良公園(若草山:2000.5.18)

ジャケツイバラ(奈良公園(若草山:2000.5.18)

マメ科* ジャケツイバラ亜科ジャケツイバラ属 【*APGⅢ:マメ科】

Caesalpinia:人名から sepiaria:生垣に生える japonica:日本の

ジャケツイバラは、川のそばや崖の斜面などの撹乱を受けた環境によく出現するマメ科のツル性樹木です。 ふつう高さは1~2mですが、古い株では根元の直径が5~6cm、高さも、他の木にはい上って数mに達することがあります。 また、葉は2回偶数羽状複葉で羽軸は対生し、小葉も対生しています。 しかし、この樹木の何より大きな特徴は、幹から枝から葉まで植物体全体に逆向きの鋭いトゲがあって、 ちょっとさわっただけでも皮膚に食い込み、その痛さにびっくりすることです。 それで、この木で生け垣をつくることもあるそうです。

. このように、鋭いトゲで人間の接近を拒否しているかのようなジャケツイバラですが、 5月から6月頃には、直立した穂状の花序にあざやかな黄色の花をたくさん咲かせ、 わたしたちの目を強く引きつけます。ただし、マメ科の花といってもエンドウのような蝶型の花(ソラマメ亜科)や ネムノキのような長い雄しべが目立つ花(ネムノキ亜科)とは違い、5弁の左右対称の花がつきます。 また、秋から冬になると長さ数cmのずんぐりした形の豆のさやが枝先につき、半分開いたまま枝にくっついているのをよく見ます(右写真:宝塚市武田尾(2000.5.19))

ジャケツイバラ(蛇結茨)という名前は、からまった幹を蛇がとぐろを巻くようすに見立てたものとされています。 興味深いのは、多くの地方でジャケツイバラがサルトリイバラ、サルカケイバラなどサルトリ系の名でよばれることで、 倉田悟先生は「樹木と方言」という本の中で、「実際、ジャケツイバラの方がサルトリイバラよりずっと刺がすごいから、 猿取の名にはジャケツイバラの方がふさわしい」とし、また、細見末雄氏も「古典の植物を探る」のなかで、多くの例を引いて同様の見解を述べられておられます。