イロハモミジ  Acer palmatum

イロハモミジ(奈良公園:2007.4.28)

イロハモミジ (奈良公園:2007.4.28)

カエデ科* カエデ属 【*APGⅢ:ムクロジ科】

Acer:強い、材は堅い  >palmatum:手のひらのような

イロハモミジはタカオカエデとも呼ばれ、むかしから日本人に大変親しまれてきた木です。単にカエデとかモミジといえばこの木を指すと考えてほぼ間違いなく、秋の紅葉はもちろん、赤みを帯びた新芽の美しさもすばらしいので、日本庭園に欠くことのできない樹木となっています。また、箕面や高尾などモミジの名勝でも、その中心的な木はイロハモミジといってよいでしょう。

カエデ属の樹木は世界に約200種あり、ほとんど全部が北半球に分布しています。日本には約25種ほどの野生種があるといわれ、その多くは温帯ないし亜寒帯に分布の中心をもっています。たくさんあるカエデの中で、イロハモミジがとくに好まれるのは、カエデの中では若干あたたかい地方に分布し、夏の暑い地方でもあまり弱らず、育てやすいからではないかと思います。

イロハモミジに非常に近縁な種にヤマモミジとオオモミジがありますが、この3種はおたがいよく似ていて、区別が困難なときもあります。どの程度近縁かについては分類学者の間でも意見が違い、人によっては3種をそれぞれ別種としたり、イロハモミジを基本種として、ヤマモミジとオオモミジをその亜種または変種としたり、また、イロハモミジとオオモミジを別種、ヤマモミジをオオモミジの変種としたりしています。図鑑の検索表では葉の大きさや切れ込みの数、葉の縁にあるきょ歯の大きさや複雑さ、2つ対になってできる果実の開く角度などが区別点になっています。

この3種には葉の色や切れ込み方、枝のしだれ方などの違う非常にたくさんの園芸品種があります。このこと自体、カエデが人々に非常に親しまれてきたことをしめす証拠ですが、どの品種がどの母種からつくられたかがよく分からないものもたくさんあります。