インドゴムノキは、つややかな大きな葉が魅力の観賞植物として、常に高い人気をもった樹木です。実際に自分で栽培した経験をお持ちの方も多いと思います。 大阪付近では冬の寒さが厳しすぎるため、屋外で大きくなることはありません。 ごくまれに、軒先などに地植えしたインドゴムノキがひさしに届くほど大きくなることがあっても、 数年に一度訪れる厳しい寒波の年に枯れてしまいます。
ところが日本でも沖縄までいくと(たぶん奄美大島あたりでも)屋外で非常に大きく育ち、 さらに南の熱帯地方へいきますと、びっくりするような大木になっているのに出会います。
何年か前、2ケ月ほどタイ国各地をまわりましたが、その間にも何ケ所かでインドゴムノキの大木を見かけました。
その中でも最も大きかったのは最初に滞在したマレー半島部にあるタクア・パという小さな町の公園にあったものです(右写真1989.10.16)。
インドゴムノキは幹や枝から沢山の気根を出し、それが地面に届くとどんどん太くなっていきますので、 どこからどこが幹で、どこからどこが根なのかよく分からなくなってしまいますが、 タクア・パのものは、幹の直径が1.5mくらいになり、太い枝から沢山の気根がすだれのように垂れ下がっていました。
ところで、熱帯地方を旅行していますと、見かけ上一本の木なのに全く形の違う葉がついているので、不思議に思ってよく見ますと、 実は一本の木に別な木がまとわりつくように生えていることがよくあります。 これは有名な「絞め殺し植物」で、鳥によって運ばれたイチジク属樹木の種子が他の木の上で発芽した後、 どんどん気根を伸ばし、根が地面に届くとさらに大きくなるというわけです。 そういう目で注意深く観察していますと、他の木にくっついたばかりのもの、 少し大きくなったもの、もとの木と同じ位の大きさになったもの、完全にもとの木を取り込んで相手を枯らしてしまったもの、 など様々な段階のものを見ることができます。インドゴムノキも、日本のアコウやガジュマルも、 本来そういう性質をそなえた絞殺植物の一種と見てよいかも知れません。