ホルトノキ  Elaeocarpus sylvestris

ホルトノキ(大阪市立長居植物園:2001.8.11

ホルトノキ (大阪市立長居植物園:2001.8.11)

ホルトノキ科* ホルトノキ属 【*APGⅢ:ホルトノキ科】

Elaeo : オリ-ブの + carpus : 実  sylvestris : 森林性の
ellipticus : 楕円形の

ホルトノキはモガシとも呼ばれ、九州や紀伊半島などの暖かい地方の海岸に近い山林に自生している常緑樹です。大阪などでは庭木や公園樹としてよく植えられており、比較的ポピュラーな木です。6月から7月にかけて10cm ほどの穂状の花をつけ、初冬に、指先ほどの大きさの黒い楕円形の実をつけます。一見ヤマモモに似た葉をつけていますので、慣れないうちは私もよく間違えましたが、ちょっとしたコツを覚えてからは間違いが少なくなりました。

そのコツというのは、ホルトノキは、一年中いつでも、どこかに赤く色付いた葉が何枚かついていることで、とくに6月の末、ちょうど花を咲かせる頃に美しく紅葉した葉が目立つような気がします。さらにヤマモモと違うところは、葉の裏の葉脈の分かれ目のところに小さな膜状のものあることと、葉脈の透視性が高く、葉脈が透けて見えることです。

ホルトノキとはポルトガルの木という意味だそうですが、日本在来の樹木にどうしてポルトガルの名前がつくのか、不思議に思っていました。それでいろいろ本を読んでいると、ホルトノキとはオリーブの木のことだとか、平賀源内がオリーブと間違えたのだなどと書いた本もあり、ますます分からなくなりました。

オリーブ油は、江戸時代、ポルトガル油とよばれ、オランダ医学の外科で良く使われました。もちろん日本にはないので、高価な輸入品であったはずです。ところが、たまたま紀州に 「づく」 というオリーブによく似た実のなる木があり、平賀源内たちがオランダ人の医者に見せて尋ねたところ、確かにオリーブの実だといわれ、「づく」 はポルトガル油の取れる木、ポルトガルの木だということになってしまいました。

もっとも、源内以前にも、伊豆産のこの木がオリーブの木ではないかと思ってオランダ甲比丹に問いただしていた人もあったようで、ポルトガルの木と命名したのが平賀源内かどうかははっきりしませんし、いつ頃ポルトガルがホルトになったかも分かりません。ただ、平賀源内が自分の書いたいろんな本でこの木を紹介し、この木の実を搾ればポルトガル油がとれるといって普及に努力したことが名前の定着に影響したことは間違いないようです。