ヒノキバヤドリギ  Korthalsella japonica

ヒノキバヤドリギ(1999.9.12/北山植物園)

ヒノキバヤドリギ (西宮市北山緑化植物園 1999.9.12)

ヤドリギ科* ヒノキバヤドリギ属 【*APGⅢ:ビャクダン科】

Korthalsella:人名(Korthals)から japonica:日本の

ヒノキバヤドリギは高さが10~20cmほどの小さな木本性寄生植物ですが、 植物体には葉緑体があって光合成し、寄生した植物(宿主)からは水と 無機塩類だけを吸収しますので、厳密には半寄生植物と呼ばれます。 西宮市北山緑化植物園 ではツバキにたくさん寄生していて、ごく間近に観察することができますが、 多くの場合、ツバキ科(ヒサカキなど)、モチノキ科、モクセイ科などの常緑樹に寄生し、落葉樹に 寄生することもあります。

北山植物園(1999.9.12) ヒノキバヤドリギの植物体は全体が偏平な緑色で関節が多く、たしかに ヒノキを連想させます(右写真:北山植物園 1999.9.12)。しかし、ヒノキの葉のように見えるのは、 実はヒノキバヤドリギの茎が変形したもので、本当の葉は小さな鱗片状に 退化して節のところに対生しています。その点、丸い茎をもち、正常な葉を つけるヤドリギとは異なります(ヤドリギも茎に葉緑体をもち、光合成を しています)。

ヒノキバヤドリギは節のところに直径1mmほどの小さな花をたくさんつけ、 直径2mmほどの橙黄色の果実ができます。この果実は熟するとはじけて、 中から粘液質に包まれた種子が1mほども飛び散るといわれ、近くにある 寄生可能な木の枝や幹にくっついたものが発芽しますが、葉にくっついたも のは枯れてしまいます(種子の散布にはアリが関与している可能性も指摘さ れています)。

ヒノキバヤドリギに限らず、寄生植物は、不定根が変形したと考えられる 吸収器を宿主の皮層をとおして篩部や木部にまで到達させ、水や養分を吸収 しています。植物の寄生は一種の接ぎ木のようなものともいえますが、 ふつう種類の違う植物間では拒絶反応のため接ぎ木できないのに、寄生の 場合どうして拒絶反応が起こらないのかとか、ヤドリギが寄生した部分が 異常にふくらんでいますが、ここでどんな形態的、生理的変化が起こって いるのかとか、なによりも宿主がいないと生きていけないという不便な 生き方にどんな生存戦略上の利点があったのかなど、植物の寄生には興味深い 問題がいっぱいあります。