ヒマラヤスギ  Cedrus deodara

若い球果をつけるヒマラヤスギ

若い球果をつけるヒマラヤスギ (大阪府立大学 1999.8.15)

マツ科* ヒマラヤスギ属 【*APGⅢ:マツ科】

Cedrus:シーダー deodara:神々の木

ヒマラヤスギは公園や学校などによく植えられているマツ科の樹木で、原産は西ヒマラヤから 東アフガニスタンにかけてのやや低温・乾燥の地方です。神々の木(Deodara)という名にふさわしく、 円すい形の大きな樹形、暗緑色の古い葉と緑白色の若枝のコントラストなど他に類を見ない特徴をもち、 しかも生育が良いものですから各地で広く植栽されています。スギという名前がついていますがスギ科 とは関係がなく、名前にまどわされない注意が必要です。

ヒマラヤスギの枝をとって葉のつきかたをよく見ますと、長い枝にそって一本づつバラバラに ついている葉(長枝葉)と、短い枝の先に束(たば)になってついている葉(短枝葉)の2種類あることが 分かります。つまり、ヒマラヤスギには、長くのびて毎年生長を続ける枝(長枝)と、それにくっついて 1年間にごくわずかしかのびず、やがて枯れてしまう枝(短枝)があり、短枝の先につくたくさんの葉が 束のように見えるのです。

このように、長枝と短枝がはっきり分化している樹木は他にもあって、身近かなものでは イチョウ(イチョウ科)がそうですし、また、大阪近辺の里山で普通にみかけるカマツカ(バラ科)や アオハダ(モチノキ科)などもそうです。いずれも名前を調べる時の手掛かりになります。

ついでですが、子供のころ旗を作ったり松葉ずもうをした「松葉」は、実はアカマツやクロマツの 短枝です。マツの場合、太くて長い長枝に2枚の葉 (ゴヨウマツやキタゴヨウの場合は5枚)をつけた 短枝が螺旋状についているのです。ヒマラヤスギではこの短枝から毎年葉がでて、少なくとも数年間は 生長を続けるのに、アカマツやクロマツではここから葉がでることはなく、 やがて枯れ落ちてしまいます。 ただ、松の新梢(みどり)を切断したりして枝先の生長点が無くなりますと、本来なら休んだままの 短枝の芽が動きだし、2本の松葉の間から新芽ができてくるので、確かに松葉が枝であったことが わかります(クロマツの項参照)。

ヒマラヤスギは亜硫酸ガス型の大気汚染に大変弱く、1960年代には大阪市内でもたくさんの木が 枯死しました。さいわい、最近は一時ほど衰弱したヒマラヤスギを見かけることはなくなりました。