ヒイラギナンテン  Mahonia japonica

ヒイラギナンテン(京都府立植物園:2000.4.2)

メギ科* ヒイラギナンテン属* 【*APGⅢ:メギ科メギ(Berberis)属】

Mahonia: 人名(Mahon)から japonica :日本の

ヒイラギナンテンには「日本の」という意味の種小名がついていますが、 もともと台湾、中国、ヒマラヤ原産の潅木で、日本へは江戸時代に薬用植物 または観賞植物として中国から導入されました。 その名のとおり、ヒイラギのようなトゲのある硬い葉がたくさんついていますが、 これは奇数羽状複葉の小葉で、一枚の葉は長さ数十cm、一枚の葉には小葉が 11~17枚ついています。 放置しておくとかなり背が高くなるようで、中国の図鑑には4mに達すると書いてあります。 しかし、ふつうは高さ1mくらいに揃えて植えている場合が多いようです。 葉のトゲが硬くて痛いものですから、立入り防止植栽としては優れたものといえましょう。

早春、早いものでは1月末ぐらいから幹の先端から多くの長い花穂(かすい)がのびだし、 2月中旬から3、4月にかけてたくさんの花を咲かせます。一つの花は小さく、直径数ミリですが、 9枚の萼片、6枚の花弁、6本の雄しべともに鮮やかな黄色ですので、目立った美しさを誇ります。 観察会のときにも紹介しましたが、太陽の光をうけて開ききった花の中心部を針のようなもので少し触れますと、 6本の雄しべが一瞬のうちに中心に向かって動きます。これは昆虫が花を訪れたときに花粉を虫の身体にくっつけるのに役立つのだと思われますが、 植物と動物の繋がりの深さを感じさせる現象としていつも感心させられてしまいます。 この現象は同じ科のメギ属植物の花でもみられますが、近縁のナンテンでも起こるのかどうかはまだ実験していないので分かりません。

日本で普通に植えられているヒイラギナンテン属植物には、 ほかにホソバヒイラギナンテン(M. fortunei)がありますが、 世界全体ではアジア、北米、中米に約70~100種もあるそうで、 中国の図鑑には5種が記載されています。この属の中国名は「十大功労」といい、 多くの図鑑には根、茎、葉、果実を解熱、解毒の薬として用いると書いてあります。 しかし、私の見た数冊の薬用植物図鑑には取り上げれれておらず、 現実には民間薬として小規模な利用しかされていないのかもしれません。