ハゼノキ Rhus succedanea

ハゼノキの紅葉(2000.12.2:天王寺公園慶沢園)

ハゼノキの紅葉(2000.12.2:天王寺公園慶沢園)

ウルシ科* ウルシ属 【*APGⅢ:ウルシ科ウルシ(Toxicodendron)属】

Rhus: ギリシャの古語rhousのラテン語化
succedanea :汁を有する

ハゼノキはリュウキュウハゼ、あるいは単にハゼともよばれ、 お寺や公園などに比較的よく植えられている、羽状複葉をもつウルシ科の落葉樹です。 背はそれほど高くなく、大きいものでせいぜい7~10m位ですが、 古木では幹がかなり太くなり、直径40cmを越えるものも珍しくありません。

ハゼノキが観賞樹としてよく植えられるのは、秋の紅葉が大変美しく、 昔から「はぜもみじ」としてもてはやされてきたからです。 もっとも、ハジ、ハジノキという名前は万葉時代からあり、 その頃はいまのヤマハゼをさしていたといわれています。 ハゼノキとヤマハゼは、ハゼノキの葉がほとんど無毛なのに対し、 ヤマハゼは枝や小葉に毛が生えていることで区別できます。

ハゼノキが日本在来の樹木なのか中国から渡来したものなのかについては 図鑑によって記載がやや異なり、はっきりしないところがあります。 よく知られているように、ハゼノキの実から木蝋(もくろう)を絞り取り、 それでろうそくをつくりますが、その技術は室町時代に中国から琉球を経て九州(薩摩地方) に伝わりました。リュウキュウハゼという名前は、ハゼノキがこの技術と一緒に琉球から渡来し、 日本在来のハゼ(現在でいうヤマハゼ)と区別するためにつけられたというわけです。 しかし、いくつかの図鑑では、日本での本種の分布域を本州の関東以西、九州、四国などとし、 必ずしも日本の在来種であることを否定していません。 いずれにせよ、ハゼノキは木蝋を取るための非常に重要な植物で、 ろうの含有率の高い多くの品種が接ぎ木で繁殖され、特に九州を始め各地で広く栽培されましたから、 鳥散布などによって逸出した個体が野生状に成育したとしても不思議はありません(写真:泉大津市東雲町(2011.12.9))

ハゼの実を加熱し、強く圧搾すると重さの20~40%の色の黒い木蝋が取れます。 これを溶かして水に垂らしますとパッとひろがってろう花ができますが、 これを数日間天日に干して漂白します。今では昔ながらの手法で蝋燭を作っているところは ごくわずかしか残っていませんが、木蝋そのものは化粧品、 織物の艶だし材などとして現在でも広く使われているそうです。