ハリギリ  Kalopanax pictus

ハリギリ(京都府立植物園:1999.10.23)

ハリギリ (京都府立植物園:1999.10.23)

ウコギ科* ハリギリ属 【*APGⅢ:ウコギ科】

kalo: 美しい + panax: 全能薬 pictus:有色の

わたしが京都大学におられた四手井綱英先生からハリギリを最初に教わったのは、大学を卒業した年の夏に北海道のサロベツでの調査に参加したときのことでした。宗谷本線の豊富駅からバスで終点の稚咲内(わかさかない)という開拓集落まで行き、そこの小中学校の校庭に3本ほどありました。強い剪定を受け、背は高くなかったのですが、そこそこ太い木だったことを覚えています。

最初に出あったのがこんな場所ですから、ハリギリというのは寒い地方の木だという印象が強すぎ、大阪の山でこの木に出合っても何となく場違いな感じをもってしまいます。しかし、ハリギリの分布域は大変広く、日本全国といっていいほど各地に成育しています。大阪でも、金剛山などにごくふつうにあります。

ハリギリの葉は、おなじウコギ科のヤツデを小型にしたような形をしていますから、山の中でも落ち葉ですぐその存在が分かります。木自体はかなり大きくなり、大阪付近でも高さ15mくらいには平気で達します。もっと寒い地方ではさらに大きくなり、高さ25m、直径1mくらいになるそうです。十和田湖の湖畔に大木があったことも覚えています。

ハリギリの樹幹(京都府立植物園(2000.8.24) ハリギリは、林学の分野では「セン」とよばれることのほうが多いようですが、材は加工しやすい有用材でさまざまな利用が行われています。建築材、家具や椅子などの器具材、滑車などの機械類、楽器材、土木用材、合板用材、‥‥‥と、用途を列挙するだけでもこの用紙の半分くらい使ってしまいそうです。

ハリギリという名前は、梧桐(ごとう:アオギリ)のような葉をもった針のある木という意味で、若い枝や幹にトゲがあります。しかし、なかにはトゲのない個体もあるようですので、あまりトゲにこだわると何が何かわからなくなってしまいます(右写真:京都府立植物園(2000.8.27))