ハナズオウは中国原産のマメ科植物で、江戸時代(1695年)に出た花壇地錦抄という本に初めて名前が出るものの、 日本へいつごろ導入されたのか定かでありません。4月ごろ、まだ葉が展開する以前に紅紫色の花を枝や幹一杯に咲かせるという大変特異な姿を見せ、 春の到来を象徴する花木のひとつです。日本ではせいぜい4~5mの低木ですが、 原産地の中国では10数mの高木になると書いてあり、同じ種がこんなに大きさがちがうのも不思議な気がします。
ハナズオウは花を見れば蝶花をつけていますし、そのあと秋ぐらいまで豆果をつけていますから、
木全体を見ればマメ科であることはすぐ分かります。しかし、もし葉を1枚だけ見せられてこれをマメ科の植物だと言い切るにはかなり勇気がいります。
というのは、マメ科植物の葉はダイズのような三出複葉であれ、エンジュのような羽状複葉であれ、
基本的に複葉ですから、ハナズオウのような単葉を見ても、すぐマメ科と結びつかないのが普通だからです。
おまけに、ハナズオウにはマルバノキ(マンサク科)という、
葉の形、大きさ、色合いなど瓜二つといってよいくらいよく似た植物があって、
葉一枚でこの両者を区別することはなかなか困難です。ただ、ハナズオウの細い枝がジグザグになっているとか、
葉柄の両端が急に膨らんでいるなどそれなりの特徴があり、
また、樹形もかなり違いますので、木全体を見れば区別は可能だと思います。
ハナズオウが他の多くの植物と違っているのは、束生した数~10個の花が幹や枝から直接出ていることです。
ある図鑑には「偽総状花序が短縮して」ついていると書いてあります。
総状花序というのは、たとえばフジの花のように一本の花軸に短い柄をもった花がたくさんついている様子をいい、
ハナズオウの場合、この花軸が極端に短くなったものと考えればいいのかも知れません。
いずれも、前年枝あるいはもっと古い枝の葉の着いていたところ(もとの葉腋)にできるものです。
熱帯多雨林には幹から直接花や果実を付ける樹木がたくさんありますが、何となくそのような幹生花(あるいは幹生果)を連想させる珍しい花や実のつき方といってよいでしょう