ゴンズイ  Euscaphis japonica

ゴンズイ

ゴンズイ (府民の森星田園地(交野市):2002.11.2)

ミツバウツギ科* ゴンズイ属 【*APGⅢ:ミツバウツギ科】

Euscaphis:eu(きれいな)+scaphis(小舟、サク) japonica:日本の

ゴンズイの果実(池田市五月山:2000.11.3) ゴンズイは、たとえば生駒山系や北摂山系などをふくめ、関東以西の二次林や林縁などでときどき見かける小木です。まばらに枝分かれした黒っぽい幹や枝には白い皮目が目立ち、長さ20~40cmの奇数羽状の複葉を対生させています。小葉はやや光沢があって厚ぼったく、大きさは長さ5~7cmくらい、幅3~5cmくらいあり、葉縁には細かな鋸歯があります。また、赤っぽい葉柄や小葉柄の付け根が少しふくらんで関節のようになっています。花は淡黄色で、5月頃に円錐花序になって咲きますが、それほど目立つわけではありません。しかし、夏の終わりから秋になると、大きさ1cmくらいの赤い袋状の果実が実り、それがはじけて、中にある真っ黒な丸いタネが見えるようになります。果皮の内側の鮮やかな赤色と光沢のある黒いタネとのコントラストが美しく、ふだん見過ごしがちなゴンズイも、その存在がよくわかるようになります(右写真:五月山公園 2000.11.4)

ゴンズイとは変わった名前ですが、今昔物語集の冒頭に、お釈迦様が兜卒天(とそつてん)から人間界に生まれ変わるとき、5つの衰兆、すなわち「五衰 (ごすい、ごんずい)」を現したと書いてあるように、一般に天人が死ぬとき五衰が現れるとされ、これがゴンズイという名の由来とする説があります。わたしはこの木のどこが仏教とつながるのか分からぬまま五衰説に惹かれていますが、これ以外にも、たとえば、毒棘(どくきょく)があって始末の悪いゴンズイという魚と同様、役に立たない木だからこの名がついたという説があり、「原色季節の花事典」には、

 「簡明に木札は記す何の役にも立たない木にてごんずゐは陽樹」

という三国玲子さんの短歌が紹介してあります。また、熊野権現の虫よけの守り札をつける牛王杖(ごおうつえ:ゴンズイで作るといわれる)がなまったものだというな説などもあり、ふだんはそれほど人目を引くとも思えないこの木にしては、びっくりするほどたくさんの説があります。

意味不明の名称というのは、それだけで人々の関心を呼ぶのかも知れません。