ガマズミ  Viburunum dilatatum

ネムノキ(京都府立植物園:2005.11.23)

>ガマズミ (京都府立植物園:2005.11.23)

スイカズラ科* ガマズミ属 【*APGⅢ:レンプクソウ科】

Viburunum:V. lantana の古ラテン名 dilatatum:拡大した、拡張した

ガマズミは、大阪近辺の二次林から大台などの比較的標高の高い所まで広く分布するスイカズラ科の落葉樹木です。水平的な分布の広がりも大きく、わが国では北海道の南部から種子島までの全域に分布し、また、朝鮮、中国にも分布しています。この点、ごく近縁種で、しかも大阪でもふつうに見かけるコバノガマズミの分布域が、福島県以南、朝鮮、中国であるのと少し異なります。

ガマズミは、5月ごろ、対生する葉の間から白い小さな花を密集させた円盤状の花序をつけ、この花の蜜を求めてたくさんの昆虫が集まってきます。そして秋になると、丸くて、やや偏平な実が真っ赤に熟し、山に彩りをそえます。たいへんおいしそうなので口に入れますと、中に堅い種子があり、薄い果肉は甘酸っぱい味がします。この実をつかって色あざやかな果実酒がつくられます。

ガマズミの葉には三行脈が目立ちますが、形も大きさも個体によってかなりの変異があり、また、表面をおおう毛や腺毛の変異も大きいようです。したがって、場合によってはミヤマガマズミなどとの区別が困難なことがあります。

ガマズミという奇妙な名前が何を意味するのか、理解に苦しみます。わたしは、直感的にこの木を焼いた木炭の品質と関係があるのかと思っていましたが、それはまったく無関係で、深津・小林共著「木の名の由来」には、ガマズミのガマはこの種の中国名「莢●(キョウ・メイ)」(●(メイ)は草かんむりに迷)に由来し、キョウメイ→カメ→カマ→ガマと変化し、ズミは「酸実(酸っぱい実)」に由来するのではないかと書いてありますし、牧野の植物図鑑では、語源は不明だが、スミは染めの転訛で、古来、このたぐい、ことにミヤマガマズミの果実で衣類を摺り染めしたことと関係があろうとしています。また、前川文夫著「植物の名前の話」のように、「神の実 (かみのみ)」とつながるのではないかとする説もあります。ところで、中国の留学生によれば「莢●」はジャミと発音するそうで、東北地方での呼び名、ジュミとの高い類似性が興味を引きます。