キダチチョウセンアサガオの仲間  Datura 属 Brugmansia 節

Brugmansia versicolor (京都府立植物園(京都市):2000.4.2)

ナス科* チョウセンアサガオ属 【*APGⅢ:ナス科】

Datura(属の名前):この植物のアラビア名から  Brugmansia (節の名前):人の名前から  versicolor:色が変わる

花と緑の国際博覧会が大阪で開催された頃から、各地にコンピュ-タで制御された大きな温室が建設され、それにつれて温室内に収容される植物も大型化し、また種類数もふえてきました。そんな中でひときわ目を引くのが大きなラッパ型の花をぶらさげたキダチチョウセンアサガオなどチョウセンアサガオの仲間です。

チョウセンアサガオ(Datula metel)そのものは熱帯アジア原産の1年生草本で、白色の花を上を向いて咲かせ、果実は一面トゲで被われています。そのため、英名を Thorn apple といいます。強力な麻酔作用をもったアルカロイドを含む植物として有名で、華岡青洲がこの植物の葉などからつくった薬を使って全身麻酔をし、乳癌の外科手術に成功したことは良く知られています。しかし、現在はこの植物を見ることがほとんどなくなり、最近は熱帯アメリカ原産の近似種ヨウシュチョウセンアサガオ (D. stramonium)、あるいはシロバナヨウシュチョウセンアサガオ が栽培され、大阪でも時々野外で栽培されたり野生化しているのを見ます。

温室に植えられているチョウセンアサガオの仲間はおもに木本性の多年生植物で、果実にはトゲがなく、花が下を向いて咲きます。そのほかいくつか目立った違いがあるので、キダチチョウセンアサガオ節に分類されていますが、例えば京都植物園のように、キダチチョウセンアサガオ属 (Brugmansia) として別属に格上げされることも少なくありません。手元にある日本の図鑑類や資料類では、まだほとんどで Datura 属を採用していますのでここでもそれを踏襲しましたが、外国の文献やインターネット上では Brugmansia 属に切り替わっているようですので、「あれ?」と思われた場合は上手に新旧の切り替えが必要です。これらキダチチョウセンアサガオの仲間にも勿論アルカロイドが含まれており、南米ペルーではアカバナチョウセンアサガオ(D. sanguinea) が予言能力を高めるとして祈祷師によって使われたそうです。しかし、現在ではもっぱら観賞用に栽培され、薬用植物として栽培されることは少ないようです。

キダチチョウセンアサガオの仲間には、名前も植物自体も学名もよく混同されて栽培されているコダチチョウセンアサガオ(D. arbolea :いずれも英名を天使のラッパ Angel's trumpet といいます)など、花色、大きさなどがよく似たいくつかの種類があり、また、二重花をつけたり花色などに変異のある交雑園芸品種もかなりあるようです。これらは、葉のつき方や花の大きさや色、花弁の表面の毛の有無、萼の形態などが区別の決め手とされていますが、そもそも世界全体で何種数あるのか、その数が5とか14とか文献によって異なったりしており、私自身、きちんと比較して観察する機会が少ないこともあって、正しく区別する自信はありません。写真につけた学名は京都府立植物園の個体につけられていたものをそのまま引き写したものですが、ちょっと見には色々な本に出ている「キダチチョウセンアサガオ (D. suaveolens) 」の写真とそっくりで、どこが違うのか説明できません。