ダイダイ  Citrus aurantium

ダイダイ(大阪市北区豊崎:2004.1.8.)

ダイダイ (大阪市北区豊崎:2004.1.8.)

ミカン科* ミカン属 【*APGⅢ:ミカン科】

Citrus:ミカンの仲間  aurantium:黄金色の

最近はデパートで買ってきた小さな鏡餅のうえにミカンをのせてすませていますが、子どものころには私の家でも餅つきをして大きな鏡餅をつくり、ウラジロや串柿とともにダイダイを飾ったものでした。ですから、ダイダイといえばお正月を思い浮かべるほど、子どもの頃から親しみのある植物でした。
 昔にくらべて減ったとはいうものの、庭にダイダイを植えている家は今でもたくさんあり、少し古い町並みを歩くと、塀の中からのびだした枝に黄色い実をつけたダイダイをよく見かけます。歴史の古い学校には、校庭に必ずといっていいほどよく植えられていますし、時には公園でも見かけることがあります。

ダイダイが縁起の良い献歳植物として大切にされてきたのには理由があって、ひとつはその形から来ています。すなわちダイダイのヘタのところが星形に少し肥大して、緑のガクとあわせて二段(台々=代々)となっていることです。もうひとつは、今年実ったダイダイの果実は冬に黄色く色づきますが、その実はそのまま年を越し、やや汚れた色ではあるものの、夏にはまた緑色が戻ってきて冬にふたたび黄色く着色するという性質があり、新しくできた果実と古い果実が同時に枝になる、すなわち、新旧「代々」の果実がなって、子孫繁栄に通じることに由来するとする説です。

ダイダイはインド原産とされ、日本へは景行天皇(本によっては垂仁天皇)のころ導入されたと考えられています。

大きくわけて2つの栽培品種があり、一つはカブス(臭橙またはダイダイ)でヘタのところは2段になっていません。果皮に独特の臭みがありますが、果汁は酸味が強く食酢として料理につかわれるほか、マーマレードの材料になります。もうひとつの品種はカイセイトウ(回青橙)でザダイダイ(座代々)とも呼ばれ、ヘタのところが台々になっています。カブスよりやや小型で、お正月飾りにはこちらが使われますが、食酢やマーマレードの材料としてはカブスより劣るとされています。

ダイダイは十字軍の時代にインドからヨーロッパに伝わり、サワーオレンジの名前で地中海に広く分布したそうです。