カリステモン  Callistemon spp.

カリステモン (大阪市大植物園(交野市):1999.8.14)

フトモモ科* マキバブラシノキ属 【*APGⅢ:フトモモ科ブラシノキ(Callistemon)属】

kallos:美しい+stemon :おしべ  spp: 複数の種があることを示す記号

もう15年以上も前の6月はじめ、八尾市の高安山のふもとを歩いていましたら、ところどころにカリステモン(ブラシノキの仲間)が真っ赤な花を咲かせていました。この花のところへきたどこかのハイキンググル-プの人たちの間で、一体これは何という花かと議論になり、キョウチクトウとかいろんな名前がでましたが、すこし遅れてきた同じグル-プの一人が、これは瓶(びん)を洗うブラシに似ているので、なにかそんな名前がついていたよ、と話しながら行ってしまいました。bottlebrush という英名は、まさに瓶を洗うブラシという意味です。鮮やかな花色と特異な形は全く想像を絶するもので、日本原産の樹木ばかりを見るかぎり、こんな植物があるとは思いもつかないのではないでしょうか。

カリステモンは、ユ-カリなどと同じフトモモ科に属する潅木または小高木で、オ-ストラリア大陸東岸からタスマニア島にかけて自生しています。毎年春に新しい枝がのび、やがてその枝のまわりに直径1センチくらいの丸いつぼみがびっしりと螺旋状にできてきます。ふつうの植物ですと、花が集まって出来た枝(花序)は、花が終わった後成長はとまってしまい、新しい枝は少し別なところから出てくるものですが、カリステモンの場合、つぼみができ、花が咲いても、その枝はどんどん成長を続けていくのがかなり変わった特徴です。

ところで、ブラシを作っている一つ一つの花を見ますと、花弁もガク片も5枚づつあるのですが、これらは緑色の小さなもので全く目立ちません。鮮やかな花を作っているのは1本のめしべと多数のおしべで、これが種類によって真紅のものからピンク色、黄白色のものまでいろいろあるわけです。一番よく見かけるのは真紅のものですが、その中には、おしべの先端にある葯(やく:花粉が入っている袋)が黄金色で、真紅のおしべと素晴らしいコントラストを見せる種類もあります(右写真:ピンク系花色のカリステモン(大阪府立大学 2000.6.1))

図鑑をみますと、カリステモンにはマキバブラシノキ、ハナマキ(金宝樹:きんぽうじゅ)、ブラシノキ、シロバナブラシノキなど、花色や葉の形態によって10種類以上も区分されており、さらに、おなじ種の中にいくつも品種がありますが、その記載は必ずしも明確ではなく、種を厳密に同定するのは困難なような気がします。