ビワ  Eriobotrya japonica

ビワ(千葉大学西千葉キャンパス(2000.6.8.)

ビワ(千葉大学西千葉キャンパス 2000.6.8)

バラ科* ナシ亜科)ビワ属 【*APGⅢ:バラ科】

Eriobotrya:erion =羊毛+botrys=葡萄の房 japonica: 日本の

ビワの花(大阪府立大学:1999.12.13.) 6月も中旬近くなりますと、それまで葉の緑にまぎれて目立たなかったビワの実が、黄橙色に色付き始め、木によってはこんなにたくさん実がなっていたのかとびっくりするほどです。そういえばビワの花がいつ咲いたのか、うっかり気がつかずにいた人も多いかも知れません。ビワの花は11月頃から翌年2月頃までの寒い時期に、暗緑色の大型の葉をつけた枝先に咲いていました。花序(花の集まり)自体は10~20cmあってかなり大きいのですが、全体が黄褐色のビロード状の毛に被われており、白い花も派手なところがなくて、それほど人の目を引きません(右写真:ビワの花(大阪府立大学1999.12.13))

九州や四国などの日本の暖かい地方に、果実が大変小さく、ほとんど食べるところのない野生のビワが生えているそうですが、これが日本在来のものか、中国から渡来したものが野生化したものかについては、植物学者の意見が分かれています。このことは、いずれ紹介する予定の野生モモの場合と大変よく似ています。堀田満先生(保育社「野山の木」の著者)は、高槻の野生モモ生育地の近くに野生ビワがあって、野生モモと同様、日本の原植生ともよく結び付いているとして、ビワが日本の在来植物である可能性を否定されていません。しかし、北村・村田両先生の原色日本植物図鑑(木本編)には、ビワの種子は大きく数も多いから、もともと日本にあったものなら洪積世や鮮新世の地層から植物遺体として出てきていいはずである、しかるにこれが出てこないことから考えると、古代に中国から持ち込まれたものが野生化したと見るべきだという主旨がのべられています。

現在、私達が食べるビワは、ほとんどが茂木(もぎ)と田中という品種で、果実も野生種にくらべ大きく、食べるところがたくさんあります。これらは天保~弘化(1830~1848)のころに中国からもたらされた大果品の種子から育成されたものが出発で、長崎県茂木でさかんに栽培され、さらに1879(明治12)年に田中芳男という人が長崎から東京へ持ち帰った種子から選抜、育成されたものだとされています。

果物としてのビワは甘みと酸味があってなかなかおいしいものですが、果実のサイズに比べタネが大きく、数も多いことが問題です。そこでジベレリンという植物ホルモンを使って「種無しビワ」を作る研究が進められ、20年ほど前の段階でほぼ完成し、あと2~3年のうちには市場に出回る可能性があると聞いていました。しかし、最後のところでうまくいかなかったのか、種なしビワは実現しなかったようです。