バイカウツギ  Philadelphus satsumi

バイカウツギ(住吉大社卯の花園:2000.5.14.)

バイカウツギ(住吉大社卯の花園:2000.5.14)

ユキノシタ科* バイカウツギ属 【*APGⅢ:アジサイ科】

Philadelphus:兄弟愛 satsumi:薩摩

バイカウツギは分類学的にはウツギに非常に近いグループで、その成育場所もウツギと同様、 山地の路傍や川のそばなどに多いとされています。ただ、どこにでもあるウツギとちがって、 実際にバイカウツギを見る機会はあまりなく、わたし自身、大阪府下でバイカウツギの自生を見た記憶がありません。 大阪府植物目録(桑島正一著)では、金剛山、葛城山などに産することが記録されていますが、 「やや希」とも記載されています(兵庫県のJR武田尾駅周辺にはバイカウツギの自生があります)。

バイカウツギの仲間は北半球の東アジア、北アメリカ、中部ヨーロッパ、コーカサスなどに約30~70種あるとされています。 文献によって種数が大きく異なるのは属の中での変異が大きく、 また雑種も多くてどこまでを1つの種と見るかが学者によって違うからです。

この仲間の花は花弁が4枚ありますが、「梅花空木」の名がしめすように花の直径が3~5cmもあってウツギよりはるかに大きく、 人の目を引きます。また、種類によっては非常に強い香りがあったり、雄しべが花弁化して半八重になったりし、 おもにヨーロッパでたくさんの園芸品種が作出されました。なかには花弁の付け根のところが赤紫色に色づくものがあって 「日の丸バイカウツギ」などの名で市販されています。日本のバイカウツギも1850年ごろヨーロッパに導入され、 交配親に使われました。

ところで、おたがいに近縁なウツギとバイカウツギの大きな違いは、 ウツギでは花が5数性で花柱は離生するのに対し、バイカウツギでは4数性で花柱は1個に合着すること、 葉の付け根にある芽がウツギでははっきり見えるのに、バイカウツギでは葉柄の中に埋まって外からは見えないことです。 また、ウツギの葉はやや厚く、表面は星状毛があるためザラザラしているのに対し、 バイカウツギの葉はやや丸くて目立った3行脈があり、また、ウツギにくらべ葉が薄く、 表面には星状毛がないためザラザラしていません。