アセビ Pieris japonica

アセビ(奈良公園:2000.3.6)

アセビ(奈良公園:2000.3.6)

ツツジ科* アセビ属 【*APGⅢ:ツツジ科】

Pieris:ギリシャ神話の詩の女神
japonica:日本の

早春に山を歩く楽しみの一つは、ちょっとした日だまりにアセビが花をつけているのに出合うことです。前年の夏にはすでに枝先に何本かのひも状の花穂(かすい)ができており、冬には蕾もふくらんでうす赤く目立っていたものが、いつの間にか小さなつぼ型の純白の花をつけているのです。まさに春がきたという気がします。

赤い花のアセビ(大阪府立大学:2000.3.15.) アセビ属の植物はツツジ科に属する常緑性の潅木で、東アジアと北アメリカに全部で10種あるとされています。 日本の本州、四国、九州にはアセビが、沖縄には花の大きい変種であるリュウキュウアセビがあります。 昔から人々に大変親しまれ、庭木としてもよく植えられています。

また、江戸時代から多くの園芸品種が作られています。 比較的普通なものとしてフクリンアセビ(葉が小型で白い縁取りがある)やヒメアセビ(矮小で花序が大きい)などが記載されています。 野生のものにも新芽の色が赤いものや黄みどりのものまでかなり変異があるようです。 また、最近は花が濃い桃色のものが植えられたり、鉢植えにしてよく売られるようになりました。 小学館の園芸植物大事典を見ますと、桃色の花をつける品種として「クリスマス・チア」、「大山」があり、 後者はこの名前でイギリスで市販されているそうです。

アセビには各地でいろいろな名前がついています。ちょっと上げてみるだけでも、 アセボ、アシビ、ドクシバ、ウジハライ、ウバノテヤキなど20~30をくだりません。 ウジハライとかウバノテヤキという名前は、この植物の葉の煎じ汁を便所のうじ虫や、 農作物や家畜の表面に付く害虫の駆除に用いていたことからきています。 また良く知られているように、漢字では馬酔木という字を当てていますが、 これは、家畜がこの植物を食べると呼吸中枢を犯されて麻痺することに由来するとされています。 それで、「みまくさは心してかれ夏野なるしげみのあせみ枝まじるらし」 というような歌がよまれています。 そもそもアセビ(アシビ)という名前の由来についてもアシシビレからきているという説もありますが、 本当のところはよく分からないようです。