アオキ  Aucuba japonica

アオキ(京都府立植物園:2008.1.5)

アオキ(京都府立植物園:2008.1.5)

ミズキ科* アオキ属 【*APGⅢ:アオキ科(ガリア科)】

Aucuba: 青木葉(あおきば) japonica: 日本の

アオキは日陰でもよく育ち、しかも、あまり大きくならない潅木ですから、 公園樹木や庭木としてよくつかわれています。とくに美しい斑(ふ)の入った品種や、 葉の形の珍しい品種が多く、少し大きな庭のある家なら必ずといっていいほど植えられています。 最近は、高いビルに挾まれた日の当らない場所での緑化材料として使われている場合も多いようです。

アオキの雄花 アオキの雌花 この木はもともと山の中にたくさん自生しており、大阪近辺でもごくふつうにみかけます。 雌雄異種(写真左:雌花、右:雄花(2000.4.8:国立博物館付属自然教育園(東京都目黒区))で、雌株には冬に真っ赤な実がつき、大変美しいものです。

この赤い実と斑(ふ)入りの葉の美しさにひかれて、1783年にイギリスにも導入されましたが、 この時は雌雄異種であることが分からず、黄色い斑のある雌株だけが導入されたため実がみのりませんでした。 70年ほどあとになって、フォ-チュンという人がわざわざ日本まで雄株を取りに来て、 やっと棯性(ねんせい:発芽能力)のある実がつくようになりました。 時間と労力と費用をかけて取りに来るだけの価値を持った木だ、と当時の日記に記しているそうです。

アオキには葉の形のほか、斑の色、形によってたくさんの品種が記載されています。 また、実の色も、普通は赤い色ですが、なかには赤くならず、 うすい緑色のまま成熟するものがあって、例えば、シロミアオキ、キミノアオキなどという品種が記載されています。 保育社の「野山の木」の著者である堀田満先生のお話では、 アオキの色には赤くなるもののほか、一部だけ赤くなるもの、赤くならないものなどいろんな変異があって、 その性質は比較的安定しており、また、場所的な分布も比較的よくまとまっているそうです。 つまり、実の色はいろいろあっても、でたらめに赤くなったり、ならなかったりするのではなく、 遺伝的にかなり固定されているわけです。

こんなふうに、一つの種の中でいろいろな変異がみられるのは、 その種がいろんな方向へ向かって進化しつつある途中の様相をしめすものとして、 生物進化を考える上で非常に興味ぶかい現象でもあります。