アオギリ  Firmiana simplex

アオギリの果枝(1999.9.16:大阪府大)

アオギリの果枝 (1999.9.16:大阪府大)

アオギリ科* アオギリ属 【*APGⅢ:アオイ科】

Firmian:人名 simplex:単性の、単一の、分岐のない

街路樹や公園樹としてごく普通に植えられている木にアオギリがあり ます。名前の通り、太い幹が緑色で、一度覚えたら忘れることのない木です。 この木は比較的少数の太い枝に大きな葉をつけ、秋にはバサバサと落葉して 何となくがさつな印象をうけてしまいます。しかし、一年を通して見ていま すと他の樹木にはみられない面白い特徴があって、興味ぶかいものです。

その第一は種子のつきかたです。元来種子というのは、雌しべの中の 胚珠が発達したものですが、この雌しべは一つまたは複数の心皮と呼ばれる ものが集まってできています。普通、雌しべを作っている幾つかの心皮はバ ラバラになることなく一つの「果実」となり、十分成熟してはじめて裂開し、 種子を散布します(裂開しないものもたくさんあります)。ところがアオギリ の場合、一本の雌しべをつくっていた5つの心皮が成熟の途中で完全にバラ バラになってしまい、しかもそれぞれが一枚の葉のように裂開して、種子は その葉のようなものの縁にくっついているのです。植物進化論の 立場からは、雌しべをつくる心皮は、本来葉からできたものとされていま すが、普通の植物では雌しべと一枚の葉を結び付けるものは何もなく、 なかなか理解しにくいところです。この点、アオギリでは「心皮=葉」とい う関係が非常に分かりやすく見えるのが興味ぶかいところです。

もうひとつ、これはどの図鑑にもあまり書いていない事ですが、秋か ら初冬にかけて実が成熟すると、普通の樹木ですと果実または種子だけを落と すのに、アオギリでは果実のついた枝全体が枯れて(写真参照)、地面に落ちてしまいます。 樹木の「落葉性」については良く知られていますが、かなり多くの木がこの ような「落枝性」を持っていることにも目をむけることが必要でしょう。

ところで、岡部佐内さんが 「アオギリの実を炒ってたべたら香ばしくておいしいですよ」 といった事があります。チョコレートの原料となるカカオもアオギリ科に属するそうですが、何か関係があるのでしょうか。