アケビ  Akebia quinata

アケビ(大阪市立大学理学部付属植物園(交野市):2000.4.16)

アケビ (大阪市立大学理学部付属植物園(交野市):2000.4.16)

アケビ科* アケビ属 【*APGⅢ:アケビ科】

Akebia : アケビ  quinata : 5小葉の

アケビというと、秋に熟したあの実を思い浮かべる人が多いと思いますが、春から初夏にかけて咲くアケビの花もたいへん風情があり、昔から人々に親しまれてきました。じじつ、アケビをうたった俳句や短歌もたくさんあります。

アケビは浅い山の林縁部に多いつる性木本植物で、長い葉柄のさきに、短い柄をもった5枚の小葉からなる掌状複葉をつけています。小葉の大きさは必ずしも一定していませんが、いずれも全縁で、その点、ごく近縁種で、3小葉からなるミツバアケビの小葉に波状鋸歯があるのと違います。ときどき、家庭の庭でアケビ棚をつくっているところを見かけますが、藤棚ほど暑苦しくなく、涼しげでたいへんいいものです。

アケビの花には雄花と雌花の区別があり、1本の柄に両方の花がつきます。そのとき、1~2個の雌花が基部に近い方に、数個の雄花が先端の方につきます。基本的な構造は雄花も雌花も似ていて、長い柄のさきに球を3つに割ったようなカップ状の苞があって、雄花では中心に6本の雄しべが集まっていますし、雌花では6本のめしべが集まっています。このカップ状の苞が赤紫色に色づいて人目を引くわけです。一見、花びらのように見えますが、アケビ属の植物には花弁はありません。

秋にたべた、黒い種子がいっぱいつまったアケビの実の甘さはよくご存じでしょうが、新芽や若い茎も、湯がいて苦みを取ればおいしいものだそうです。また若い果実も塩漬けや梅酢づけにして食べるそうです。さらに、しなやかな茎が、ものを結えたり、篭や花篭をつくる材料としてきわめて有用であることは今も昔もかわりありません。