アカメガシワ  Mallotus japonicus

アカメガシワ(大阪府立大学:2000.4.28.)

アカメガシワ (大阪府立大学:2000.4.28)

トウダイグサ科* アカメガシワ属 【*APGⅢ:トウダイグサ科】

Mallotus: (果実に)長軟毛がある japonicus: 日本の

アカメガシワは川岸やガケくずれのあったところなど、さまざまな原因で攪乱を受けた環境に生える典型的な陽樹です。繁殖力がたいへんつよく、鳥によって運ばれた種子から、石垣の間など思いもかけないところから芽を出しているのをよく見かけます。また種子の寿命は100年以上もあるといわれ、森林を伐採したりすると土の中に埋まっていた種子がすぐ芽を出してきます。箕面川の上流にダムができたのは1983年で、もう30年以上も前のことですが、そのとき森林の表土を保存し、造成でできた斜面に撒き出したところ、たくさんのアカメガシワが生えてきて、今では高さ8m程の森林状態になっているという報告もあります(梅原1991)。 そういう意味では、アカメガシワは不安定な環境を指標する樹木の一つと言ってよいでしょう。

アカメガシワは赤芽がしわで、春先、出てきた新芽が鮮やかな赤色をしているところからこの名がつきました。夏に出る新芽も春先ほどではないものの結構赤く、名前と特徴が一致して大変覚えやすい木です。また、かしわの方は「かしぎ(炊)葉」からきており、炊事と関係したところからきています。そんなこともあって、ところによってはアカメガシワのことを五菜葉(ごさいば)とか菜盛葉(さいもりば)とよんでいますし、また、伊勢神宮ではミツナガシワ(本来はオオタニワタリ)と称して神前への供物をこの木の葉の上に乗せるそうです。

アカメガシワの黄葉(2000.11.19:神戸森林植物園) アカメガシワの葉には長い葉柄があり、葉身には3本の目だった葉脈があります。若い葉には毛がたくさん生えていますがやがて無毛となり、秋には黄色く美しく色付きます(右写真:神戸森林植物園 2000.11.19)。脈のつけねのところに赤い2つの蜜腺があり、この蜜腺を「赤目」にみたてて名前の由来とする説もあります。幹には縦に走る白い模様が目立ち、ちょうどムクノキの樹肌のようにも見えます。しかし、アカメガシワはムクノキに比べて枝先が太く、1ケ所から3本の枝が盃状に出ていることが多いので、樹形の特徴を把握すれば冬でも間違えることはありません。もし、ジンチョウゲ科のミツマタがなければ、そして新芽が赤くなければ、この木にミツマタの名がついても不思議はないように思います。