アカガシ  Quercus acuta

アカガシ(大阪府立大学:1999.7.21)

ブナ科* コナラ属アカガシ亜属 【*APGⅢ:ブナ科】

Quercus : 良質の材 acuta :鋭尖の(葉の先が)

大阪の平野部や低い山の中では、アラカシシラカシはかなりふつうに見かけますが、アカガシにであうチャンスはそれほど多くありません。その原因の一つは、アカガシの分布域がやや標高の高いところにあり、個体数もそれほど多くないことにあると思います。しかし、大阪にも場所によってはたくさん生えているところもあり、例えば、大阪で一番最初に自然環境保全地域に指定された高槻市の本山寺周辺にはたくさんありますし、能勢妙見山のブナ林のなかにはたいへん大きなアカガシの木があります(このようにブナと共存できるカシ類はほかにあまりありません(写真:妙見山のアカガシ大木(2010.11.21))。また、先日、六甲の摩耶山にのぼり、旧天上寺の方へ旧参道を下りましたが、それほど大きな個体はありませんでしたが、たくさんのアカガシが生えていました。

アカガシの葉はかたくて幅がひろく、葉縁は全縁、ときに上のほうに低い鋸歯があって、先が急に細くなっています。表面は光沢のある暗緑色で、一見したところアラカシに近い印象を受けますが、葉の裏は淡緑色で、その点、ロウ質の白味をおびたアラカシとははっきりと違います。さらに、アカガシの葉柄はカシの中では特に長く、葉身の1/4~1/3ほどもありますから、この特徴を把握すれば両者の区別は容易です。

アカガシという名前は、紅褐色を帯びた心材の色に由来しており、堅くて弾性があり、強くて狂いがこない反面、細工が困難とされています。そのため、床柱や敷居などの建築材、菓子型・鉋(かんな)台・機械台などの器具材、三味線の棹などの楽器材、船の櫓(ろ)などによく使われましたが、家具などを作るのにはあまり使われなかったようです。意外なところでは、古墳時代の大型運送具で、1978年春に藤井寺から出土し、保存処理が終わったあと河南町の「大阪府立近つ飛鳥博物館」に展示されている「修羅」 が大きなアカガシだったと同定されています。また、最高級の木刀はアカガシで作ったそうですが、現在でもゲートボールのスティックやペンダントなどを作るのに使われているそうです。