アベマキ  Quercus variabilis

アベマキ(京都府立植物園(京都市):2000.11.25.)

アベマキ ((京都府立植物園(京都市):2000.11.25))

ブナ科* コナラ属(コナラ亜属)【*APGⅢ:ブナ科】

Quercus : ナラの仲間のラテン名  variabilis :多形の

アベマキはクヌギに大変よく似た落葉樹で、遠くから一見しただけで両者を区別することはできません。葉の形や大きさも、木全体の形や大きさもよく似ており、また、冬に枯れた葉がいつまでも枝にくっついているところもよく似ています。

アベマキとクヌギの大きな区別点は幹と葉のふたつにありますが、確実な区別点として使えるのは事実上葉の特徴だけではないかという気がします。クヌギとアベマキの葉を比べてみると、葉の表面の色や形はほとんど同じといっていいでしょう。側脈の数や、側脈が葉縁に達した後トゲのように付き出ているところも同じです。しかし、葉の裏にはかなり明瞭な違いがあり、クヌギの葉の裏は緑色で光沢があるのに対し、アベマキの葉の裏は灰白色ないし淡黄白色で光沢がありません。この違いは、アベマキの葉の裏には非常に短い毛が密生しているのに対し、クヌギの葉の裏には毛がない為に起こっています。

一方、幹のほうの特徴は樹肌のコルク層の厚さにあります。アベマキにはコルククヌギという別名があることから分かるように、樹皮に厚いコルク層が発達しています。そのため、樹肌には深いミゾがあり、さわると弾力性があって暖かな感じがします。クヌギの方にももちろんコルク層があるのですが、アベマキほど発達していません。そのため、ちょっとした傷で樹液がしみだし、クワガタムシやスズメバチがよく集まります。アベマキは日本産の樹木の中ではコルク層の発達が特に著しいので有名で、ちょっと信じがたい数字ですが、厚さ10cmに達することがあると書いた本も1、2あります。ですから樹肌に傷がつきにくく、樹液をもとめて昆虫が集まることもありません。

ところでコルク層というのは樹木の表面を保護するために作られた組織ですが、コルク形成層という特別な分裂組織でつくられます。これは木部と篩部を作る形成層より外側の皮の部分にあります。地中海性気候のところに成育するコルクガシは9年位の周期でコルク層を剥ぎ取りますが、このコルク形成層のところから剥ぐので木部も篩部も傷付かず、木が枯れることはありません。